研究課題/領域番号 |
23360121
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高木 伸之 岐阜大学, 工学部, 教授 (80179415)
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研究分担者 |
王 道洪 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20273120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 雷 / 落雷の予知 / 風力発電 / 空間電荷 |
研究概要 |
本研究では風力発電施設への落雷をその数秒前に予測することによって、風車本体と変電施設やその先の電力系統とを完全に切り離すというこれまで行われてきた耐雷対策とは異なる新たな耐雷対策を確立することを目的としている。風力発電設備への落雷を予知す るためには風力発電設備周辺の地上電界と雷雲下の空間電荷分布が分かれば可能となる。雷雲下の空間電荷分布をリアルタイムに測定する方法は開発されておらず、その技術開発を行うと共に、その結果から導かれる予知の妥当性を観測で確かめる。 平成25年度はA.ファラデーケージ法、B.静電界遮蔽法による冬季雷観測を平成25年10月中旬から平成26年1月末までの約3ヶ月間石川県内灘町の風力発電設備周辺において人が常駐して実施した。ファラデーケージ法は4カ所で静電界遮蔽法は1カ所で行った。C.音波法は室内実験においてノイズ源の洗い出しと削減対策を行うことにより昨年度より高感度で電荷密度を精度良く検出することに成功した。また、新たな空間電荷測定法として電位測定法の改良を行った。 落雷予知において妨げとなる空間電荷による地上電界の緩和効果を取り除く試みを行った。4カ所のファラデーケージによって観測された地上の空間電荷分布と1カ所に設置された高さ4mのファラデーケージによって空間電荷の高度分布より観測領域内の全電荷量を 予測して雷雲電荷だけの地上電界分布を求めた。その結果、自発雷では落雷直前に風力発電施設周辺の電界がかなり高くなっていることを確認した。このとき空間電荷を考慮しない通常の地上電界はそれほど高くなっていなかった。また、近くの雷放電によって誘発する他発雷の場合は風車から離れた場所で空間電荷を考慮すれば電界が高くなっていることを確認した。風車以外への落雷も予知することが可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雷雲下の空間電荷をファラデーケージを用いて多地点で計測することに成功し、当初の予測通りの結果も得られている。データを用いて空間電荷マップを作成することができた。地上電界のマッピングもすでに行っており、これらを数値演算することにより雷雲電荷だけの電界マッピングに成功した。その結果、自発雷では、空間電荷を考慮しない通常の地上電界はそれほど高くなっていなかったにもかかわらず、空間電荷を考慮した雷雲電界では落雷直前に風力発電施設周辺の電界がかなり高くなっていることを確認している。この結果は落雷の予知が可能であることを示している。従って、ファラデーケージ法については計画以上に進んでいる。 静電界遮蔽法は空間電荷の測定に成功しているが、さらに金属電極の昇降を自動化する技術の開発にも成功し今後は多くのデータが取得できることが期待できる。 音波法は室内実験においてノイズ源の洗い出しと削減対策を行うことにより昨年度より高感度で電荷密度を精度良く検出することに成功しており、おおむね順調に進展している。 ドップラー・ライダー法は装置の設計までは可能であることが確かめられたが共用のレーザーの借りだし期間が短く実測できていない。 雷雲下の空間電荷密度分布を知るには高度方向も重要なファクターであるが、新たに開発した小型の空間電荷測定装置が今後は威力を発揮できると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
統計上意味のある数量のデータを獲得するため、数年間の観測は欠かせない。そのため、平成23年度から平成25年度の観測結果を踏まえた観測を平成26年度以降にも同様に実施する。これと並行して平成23~25年度の観測データの詳細な解析を行い、冬季上向き雷を予知するための雷雲内電荷と雷雲下の空間電荷を各風車落雷毎に求め、落雷発生の共通因子を洗い出す。風力発電施設での落雷には雷雲の接近により風力発電施設先端での電界が高くなり先端から放電が開始する自発型落雷と風力発電施設周辺での雷放電によって風力発電施設先端で電界が一時的に高くなり先端から放電が開始する他発型落雷の2種類がある。当初は自発型落雷の予知だけを目指していたが他発型も可能性がある結果が一部得られた。本当に可能かどうかどうか解析数を増やして予知の可能性を検討する。 ファラデーケージ法では、新規開発の電位法型空間電荷測定装置の精度を確認できれば高所での測定カ所を増やし空間電荷密度の高度減衰の違いを調べる。音波法では受信感度を上げるためにアンテナ面積を広げ測定感度の上昇を目指すと共にノイズ成分の低減を継続して行う。また、静電界遮蔽法は金属電極の昇降を自動化する技術の開発にも成功したので今後は多くのデータの取得に努める。 各種の空間電荷測定法を比較してデータの精度の検証も進めていく。
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