研究課題
本年度は、まず既設の高温超伝導誘導同期回転機(固定子:Cu巻線、回転子:ビスマス系高温超伝導巻線、3相8極、最大出力:50kW、定格出力:10kWを想定)につき、Cu巻線構成の見直し、設計変更、および改造を完了し、回転数1800 rpmまでの無負荷連続運転に成功した。また、超低速(75 rpm)から最高回転数1800 rpmまでの急加速試験を実施し、その十分な加速性能を実証した。次に、上記回転機の電磁界解析モデルを正確に作成し、有限要素法によってその諸特性を明確化するとともに、例えばミドルクラス自動車についてダイレクトドライブ(トランスミッションを省略する運転)が可能な高トルクが得られることを解析的に示した。さらに、上記電磁界解析結果に基づいて漏れインダクタンス他のパラメータを決定するとともに、高温超伝導/常伝導ハイブリッド2重かご形巻線の抵抗-温度特性を考慮した非線形等価回路解析コードを構築した。高温超伝導/常伝導ハイブリッド巻線の抵抗-温度特性の定式化に際しては、上記した改造機に用いているロータバーを直接冷凍機伝導冷却し、その実測値を用いた。なお、超伝導ロータバー抵抗の評価式にはWeibull関数を適用し、また常伝導ロータバーの抵抗にはOhmの法則を用いた。上記等価回路解析の結果、非超伝導状態における停動トルク(最大すべりトルク)の大きさが、超伝導状態の最大同期トルク(同期回転状態における最大トルク)に比較して極端に小さくならないことを明らかにした。この結果から、始動時に短時間必要とする大きなトルク特性について、非超伝導状態では停動トルクを、また超伝導状態では左記停動トルクと同等の同期トルクを利用することにより、高温超伝導誘導同期回転機の温度が変化してもスムースな運転切り替えの可能性を見出すことができた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の当初目標は、試作機の設計までであった。しかしながら、既試作機を有効利用して、本研究テーマの目標に合致するように改造したところ、その諸特性を含めて試験結果を得ることに成功した。さらに、その実験結果を利用して非線形等価回路解析コードを構築することで、最大トルクに関して超伝導状態と非超伝導状態でスムースな運転の切り替えの可能性を解析的に示すことに成功した。従って、本研究は当初計画以上に進展していると考えられる。
今後は、まず超伝導状態と非超伝導状態におけるスムースな回転モードの切り替えを行うため、平成23年度の解析的成果を実験的に検証していく。また、室温付近から極低温度(超伝導状態)至るまでの連続運転を想定し、効率最大化を目的とした最適な冷却方法や駆動方法を研究していく。さらに、開発した高温超伝導誘導同期回転機の具体的応用システムを検討していく。
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超電導Web213月号
巻: (電子媒体) ページ: 7-9
電気学会誌
巻: 131巻9号 ページ: 630
10.1541/ieejjournal.131.630