研究課題/領域番号 |
23360129
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 真二郎 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50374616)
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研究分担者 |
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
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キーワード | 半導体ナノワイヤ / 強磁性体ナノ構造 / 選択成長 / スピン偏極発光素子 / ボトムアップ形成 / 複合ナノ構造 / 半導体ナノテクノロジ / スピントロニクス |
研究概要 |
本研究は独自の半導体ナノ構造作製技術をスピントロニクスと融合することにより、(1)化合物半導体ナノワイヤ(NW)に強磁性体ナノクラスタ(NC)を複合した強磁性体・半導体ヘテロ接合NWによるナノスピン発光素子を提案し、(2)Si(111)ウェハ上で位置・サイズ制御可能な全く新しいビルドアップ型作製技術の確立を目的とする。本年度は(a)強磁性体・半導体ヘテロ接合NWの作製、(b)NWの物性・構造評価、(c)埋め込みプロセス技術の開発を中心に研究を推進した。 GaAsを井戸層とするGaAsP/GaAs量子井戸を有するNW構造作製の前段階として、これまでの実験的知見が豊富なGaAs(111)Bウェハを用いて、GaAsP/GaAsコア・シェル型NW作製に関する結晶成長条件の取得を行い、これをテンプレートとしてMnAs-NCの作製を行った。従来のGaAs-NW上のMnAs-NC形成による複合構造と異なり、NWの稜線および側面と同時にNW上面、つまりGaAsP(111)B面上にもNCが形成されるとの知見を得た。さらにSi(111)ウェハ上に絶縁体であるAl2O3薄膜を5nm堆積した構造をウェハに用いて結晶成長実験を行った結果、絶縁膜上においてもNW成長直前の熱処理により、直径約100nmのAlGaAs-NWを選択形成することに初めて成功した。NWの評価に関しては、当初予定した結晶構造評価の前に、形成されたNCのNWへの影響を早期に評価する目的で、作製した複合構造の電気特性評価に関する実験を行った。そのためまずは二端子素子構造のデバイスプロセス技術を開発し、これによりGaAs-NWによるプロトタイプ素子の電流-電圧特性を評価した結果、MnAs-NC/GaAs-NWはp型の電導特性を示すことを明らかにした。これまでの知見から、結晶成長中、GaAs-NWにMnが熱拡散した結果と推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaAsを井戸層とするGaAsP/GaAs量子井戸を有するNW構造作製の前段階として、これまでの実験的知見が豊富なGaAs(111)Bウェハを用いて、GaAsP/GaAsコア・シェル型NW作製に関する結晶成長条件の取得を行い、これをテンプレートとしてMnAs-NCの作製を実施し、素子構造の作製に対する実験的知見を蓄積できた。作製した複合構造の断面構造観察・結晶構造解析・固相組成分析等を当初予定したが、本年度は、電気特性評価およびプロトタイプ素子試作のためのデバイスプロセス技術の確立を優先して検討し、電気測定用サンプル素子を試作できた。基礎的な電気特性評価を早期に実施することにより、今後、解決すべき課題の抽出、改善策の検討、素子構造の最適化等にも早期に着手できる。構造評価等に関する当初計画の変更による影響を補い、順調に進展していると考えている。さらに本年度実施した実験の過程で、当初目指したナノスピン発光素子以外の新しいナノ磁気デバイス応用に関する着想も得ることができ、研究の今後の発展の面においても順調に進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
既に作製したサンプルも含め、透過型電子顕微鏡による詳細な結晶構造評価を他の実験と並行して実施し、構造の最適化・作製技術の確立を目指す。また、作製した電気測定用サンプル素子の電気特性評価を実施し、確立したデバイスプロセス技術の改善、および素子構造の最適化を行う。以上の実験結果を踏まえて、プロトタイプ素子の試作を目指す。また本研究では、当初から実施している海外研究協力者との連携も極めて重要になるため、今後も引き続き推進する。これに関しては、作製したいくつかのサンプルについては既に磁気抵抗特性評価を開始しており、これらの結果を素子構造の最適化にフィードバックする。さらに本年度の成果から、当初目指したナノスピン発光素子以外の新しいデバイス応用として、NWを用いたナノ磁気センサー実現の着想を得た。本研究の成果を十分活用することで得られる相乗効果により、こちらのデバイス応用研究についても並行して推進したい。
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