研究課題/領域番号 |
23360130
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
角田 匡清 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80250702)
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研究分担者 |
古門 聡士 静岡大学, 工学部, 准教授 (50377719)
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キーワード | スピン分極 / 磁気抵抗効果 / スピンエレクトロニクス / 磁性 / 金属物性 |
研究概要 |
Fe_4N薄膜の負の異方性磁気抵抗効果の物理的起源を調べる目的で、種々の強磁性体における異方性磁気抵抗(AMR)効果を統一的に説明できる理論模型の構築を行った。従来のAMR効果の理論(Campbell-Fert-Jaoulモデル、およびMalozemoffモデル)を踏襲し、スピン軌道相互作用による局在(d)電子軌道のスピン混成を考慮し、伝導(s)電子がs軌道ならびにd軌道へ散乱されるモデルを用いた。従来理論の適応性の限界が、伝導電子のスピンに依存した散乱過程の一部のみを考慮していること、ならびに、不十分な近似に因っていることを明らかとし、新たにAMR比の一般表式を導いた。本表式を現実の材料に対して適用した結果、実験事実をよく説明できることが判った。特に、従来理論で説明されていなかったハーフメタル材料の負のAMR効果についても十分な説明がなされた。本理論の範疇では、擬単結晶Fe_4N薄膜で低温で観測された抵抗の磁界角度依存性(AMR曲線)上のcos40成分は説明できず、更なる検討が必要である。 Fe_4Nと同様の逆ペロブスカイト型構造を有する窒化物Mn_4Nを合成し、磁気および磁気伝導特性の計測を行った。反応性スパッタリング法により、MgO単結晶基板上に擬単結晶Mn_4N薄膜の形成が可能であることを見出した。同薄膜は垂直磁気異方性を示すことを見出し、現時点では、Mn_4N擬単結晶薄膜の結晶構造が、立方晶から僅かに歪んでいることが原因と考えている。擬単結晶Mn_4N薄膜の低温でのAMR効果の符号は負であった。バンド計算でフェルミ面におけるMn_4Nの3d軌道の状態密度は多数スピンの方が大きいこと、ならびに上述の理論模型の結論を考慮すると、実験で得られた負のAMR効果から、Mn_4N薄膜中では多数スピン電子が伝導の主を担っていること(正のスピン分極)が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画が順調に実施され、所期の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に新たな得られたFe_4N類型材料であるMn_4Nを用いて、強磁性トンネル接合(MTJ)膜を作製する。Fe_4Nを用いた場合のMTJ膜の磁気伝導特性との比較検討、ならびにFe4NとMn_4Nを組み合わせたMTJの磁気伝導特性の評価を行い、負のスピン分極を有する新奇なスピントロニクスデバイスの開発を目指す。
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