研究課題/領域番号 |
23360130
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
角田 匡清 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80250702)
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研究分担者 |
古門 聡士 静岡大学, 工学部, 准教授 (50377719)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スピン分極 / 磁気抵抗効果 / スピンエレクトロニクス / 磁性 / 金属物性 |
研究概要 |
Fe4Nの負のスピン分極はFeの多数スピン伝導電子のフェルミ準位での状態密度がN原子との軌道混成により著しく減少することに起因している。このため、(001)配向したFe4N薄膜と立方対称性を有する結晶質バリア層を組み合わせた強磁性トンネル接合膜で巨大TMR 比を得ることが期待できる。低抵抗高TMR比を有する強磁性トンネル接合(MTJ)を実現するためには、Fe4Nとの格子ミスフィットが小さく障壁高さの低いバリア層材料が必要である。Cu3NはFe4Nとの格子ミスフィットが0.5%程度であり、バンドギャップも0.8~1.9eVと小さいため上記の要請にマッチしている。本年度は、反応性スパッタリング法によるCu3N薄膜の作製とその伝導特性評価を行った。その結果、十分に窒化が進んだ状態のCu-N薄膜は半導体的伝導特性を示すことが判った。同薄膜をトンネル障壁層として、Fe4N/Cu3N/CoFeB構造のMTJを作製した結果、Cu3N層がトンネル障壁として働くことが確認できた。しかしながら磁気抵抗変化率は得られず、Fe4NとCu3Nの界面の組成・構造の最適化の必要性が示唆された。 Fe4N薄膜の負の異方性磁気抵抗効果の物理的起源を調べる目的で、種々の強磁性体の電気抵抗の磁界印加角度依存性(AMR曲線)のcos4θ成分を説明できる理論模型の構築を行った。昨年度までに構築した拡張型Campbell-Fert-Jaoulモデルに対して、基底を変え結晶場の効果を取り入れることでcos4θ成分の導出が可能であることが判った。 Fe4Nに特徴的な負のスピン分極電子による伝導がスピンダイナミクスに及ぼす効果を調べる目的で、Fe4N/Pt積層膜にマイクロ波を印加しFe4N層の磁化の歳差運動を励起した。逆スピンホール効果によってFe4N薄膜からスピン流が生成されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画が順調に実施され、所期の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Fe4N類型材料として昨年度までに開発したMn4Nに引き続き、(Fe,Co)4Nならびに(Fe,Ni)4N薄膜の作製を行う。(Fe,Co)4Nに関するバンド計算によれば、Fe4Nと同材料のバンド構造は類似しており、概ねリジッドバンドモデルを適用でき、Fe4NへのCo添加による電子数変化によって、フェルミ準位の制御が可能となり、電子状態密度のスピン分極を1(ハーフメタル)とすることが可能となる。一方で同材料の熱安定性など、現実にスピントロニクス材料として適用可能であるか否かについての実験的検証はこれまでに行われておらず、今後の研究でこの問題を明らかにする。 また、Fe4Nを用いた強磁性トンネル接合膜を開発するため、酸化膜バリア層材料の検討を行う。具体的にはMgAl2O4ならびにSrTiO3の安定薄膜合成技術の開発と同バリア層を用いたFe4N/バリア/Fe4N の構造を有する強磁性トンネル接合膜の開発とその磁気伝導特性の検討を行う。
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