研究概要 |
研究初年度は、化学的手法によう多孔質Siの作製から、HFにKMnO_4酸化剤を添加することにより偶然発見した、K_2SiF_6:Mn^<4+>赤色蛍光体の発光諸特性について詳細な理論的、実験的解析を行った。この赤色蛍光体の最大の特徴として、高性能蛍光体が極めて安価に合成可能になることが上げられる。"高性能蛍光体"は、具体的には、i)外部量子効率が極めて高く(約40%)、ii)青色LED励起で最大の赤色発光強度、iii)高温での温度消光が少なく、かつiv)「希土類元素フリー」が上げられる。青色LEDで強く発光する赤色蛍光体は当将来の環境・気候変動を懸念し「2008北海道洞爺湖サミット」で議論されたCO_2削減案件(2050年までCO_2排出50%削減がG8諸国の長期目標)の達成を左右しかねない重要なものである。ちなみに、全電力に占める照明用途の割合は約20%であり、高効率照明としての白色LED実現には、赤色蛍光体が不可欠である。供給国中国に大きく依存している「希土類」を含まない蛍光体としても、大きな魅力である。初年度は、この六フッ化物蛍光体であるK_2SiF_6:Mn^<4+>と類似の蛍光体、A_2BF_6:Mn^<4+>(A=Na,Cs,NH_4;B=Si,Ge,Sn,Mn)の合成にも成功し、これら蛍光体の諸性質も調べた。また、六フッ化物蛍光体を母体とし、Mn^<2+>を賦活剤とした新しい黄色蛍光体の合成にも成功した。さらに、SnCl_2、MnF_2、KC1:Sn^<2+>などの赤、緑、青色発光蛍光体の合成と諸特性の測定も行った。そして、蛍光体だけでなく、LEDやナノワイヤ物質、半導体微粒子と蛍光体との複合機能素子の開発を目指して、これら材料の物性を解明すべく、基礎研究も進め、所望の結果を得た。
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