研究課題
キャリア間多体クーロン相互作用を平均場近似で取り入れたレーザーのモード利得を定量的に計算する理論の定式化とコード化を進めた。計算パラメータをk・p 摂動論に基づいて決定し、1 次元量子細線系と2 次元量子井戸系用の定量計算コードを、Linux マシン上のFortran数値計算コードとして完成させた。また、等価な計算をMathematica上のコードに作り直した。遮蔽されたクーロン相互作用の波数依存性を無視する近似を行うと解析的に処理できる部分が増えて計算が容易になり、しかも計算結果を大きくは変えないということが解ってきたので、この方式での半定量計算の定式化とコード化も開始した。普及しているTDDFT計算用の量子化学計算ソフトGaussianを用いた量子化学計算も行った。上記の計算コードの使い勝手向上に役立てた。実験では、2点励起内部発光減衰透過計測法を開発し、オリジナルの顕微分光計測系を用いてその実証実験を行った。さらに、ハッキ-パオリ-キャシディ法と組み合わせた評価計測により、ダイナミックレンジの高い利得吸収スペクトルの精密定量測定を確立した。高品質T 型量子細線レーザー素子をMBEへき開再成長法により、また3周期量子井戸レーザー素子をMBE成長・フォトリソグラフィー・ドライエッチングにより作製した。さらに10周期量子井戸やパラメータを変えた量子井戸レーザーのMBE成長までを行った。これらの試料に、上記定量計測法を適用し、得られた定量的利得スペクトルやピーク利得値について、理論計算との比較を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
実験データを理論計算と比較するに当たり、キャリアの温度を決定する必要があり、その試行錯誤を行ってきたが、その結果ケナード・ステファノフ関係式(詳細平衡関係式、久保・マーティン・シュヴィンガー関係式、ルーズブルック・ショックレー関係式など分野によって様々な呼ばれ方がされている)という関係式を手がかりに、キャリア温度やさらには非平衡分布を評価する優れた方法が見出された(論文投稿・受理決定済み)。また、比較検討のため進めてきたTDDFTの理論計算でも、計算結果に一部実験結果から得られた補正を加えることにより、pH変化に伴い複数のイオン化状態の平衡が存在し濃度変化する溶液中分子の濃度をけっている方法が見出され、生物発光のpHに伴う色変化のスペクトル解析に有用な結果が得られた。
当初計画どおりに、1 次元量子細線系と2 次元量子井戸系用のキャリア間多体クーロン相互作用を平均場近似で取り入れ、レーザーのモード利得を定量的に計算する理論の数値計算コードの開発・試用と、理論により得られた定量的利得スペクトルやピーク利得値を実験と比較して検証する方針で研究を進める。これまでよりも更に高品質を持つT 型量子細線レーザー素子、量子井戸レーザー素子を作製し、利得吸収スペクトルの精密定量測定を行い、計算と比較をする。研究の進捗により新たに見出されてきた、非平衡分布の寄与や、TDDFT理論計算の優れた点を考慮に入れつつ、基礎研究を推進する。
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