カルコゲナイド相変化材料薄膜を光学マスクとした高分解能近赤外ナノ分光法の開発に継続して取り組んだ。高光透過性を有するアモルファス化領域を開口として機能させ、空間分解分光をおこなう。観察対象としては1.3~1.5umにて発光するInAs/InP量子ドットを用意し、その上に相変化薄膜を成膜した。これまで相変化膜としてGeSbTeを使用してきたが、新たにGeTeを導入し、アモルファス化条件の最適化を行った。GeTeの方が結晶化、アモルファス化が容易であり、また相変化閾値が明瞭であるため、アモルファス化領域の微小化に有効であることが明らかとなった。また、さらなる開口の微小化のために、ドーナツ状スポットによる再結晶化法と組み合わせることを試みた。通常のアモルファス化の後に、フルエンスを抑えたアジマス偏光ビームを照射することにより、アモルファス化領域の外周部を結晶化し、開口径を半分以下にすることができた。 相変化時の体積変化にともなう応力印加を利用した量子ドット発光エネルギー制御法の高度化に継続して取り組んだ。こちらの実験においてもGeTe膜を導入し、複数パルス照射によるアモルファス化・結晶化によって、段階的かつ可逆的な発光ピークシフトを確認した。相変化にともなう体積変化がGeSbTeよりも大きいため、各ドットのピークシフト量の平均値として大きな値が得られた。最大エネルギーシフト量は3meV程度であった。また、アモルファス化領域と量子ドットの相対位置とシフト方向・シフト量の関係を系統的に調査した。アモルファス化領域直下ではアモルファス化量に比例してレッドシフトを示し、アモルファス化領域周辺部ではブルーシフトを示すことを見出した。この結果は応力分布シミュレーションと良く一致している。
|