研究概要 |
本研究は,TFT技術の可能性を追求し,グリーンLSI実現のための基盤となる技術を確立することを目的としている。H23年度は,(A)高性能TFTデバイスの研究,(B)高性能TFTデバイス製造プロセスの研究,の研究を実施し,これまで申請者が進めてきたTFTデバイス・製造技術研究を先鋭化した。 (A)高性能TFTデバイスの研究 製造コストを抑えつつ,動作性能を向上することを主眼に,最適なTFTデバイス構造を明らかにするため,動作物理を実験に基づいた理論とシミュレーションにより詳細に解析した。その結果,我々が事前に試作したTFT(L:1.76um)では,ドレイン電極とゲート電極のオーバーラップによる寄生容量が大きく遮断周波数が400MHzと低く抑えられたが,セルフアライン構造を適用してオーバーラップ量を1umまで低減することにより,L:1umのとき遮断周波数1.94GHzまで向上し,ある程度の高周波応用も可能であることが示された。また,寄生容量の低減により消費電力も低減される。 (B)高性能TFTデバイス製造プロセスの研究 高性能TFT実現の鍵となるラテラル結晶化ポリシリコン薄膜を形成するために申請者らが開発している連続波レーザーアニール技術を先鋭化し,更なる特性(移動度)の向上のためのプロセス構築を行った。具体的には,TFT作製プロセスを見直,ゲート絶縁膜形成技術として,ラジカル酸化を導入し,さらにMoによるメタルゲートを導入した。これら新規プロセス導入により,TFT作製時の温度上限を550℃に抑えた。レーザーアニール時のシリコン薄膜での結晶成長を電子線後方散乱回折測定により詳細に検討を行い,その成長メカニズムを明らかにするとともに,より均一な結晶面方位を実現する試みを進展させた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,高性能TFTデバイスの研究,高性能TFTデバイス製造プロセスの研究を進展させると共に,TFTによるユビキタスセンサーネットワーク向け要素回路の研究にも着手する予定である。 研究分担者の黒木伸一郎は平成24年度から広島大学に転任となるが,分担研究は転任先でも継続して実施する予定である。連絡を密にし,適宜研究打ち合せを実施することにより,研究の遂行に問題は無い。
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