研究課題/領域番号 |
23360152
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井上 真澄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00203258)
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キーワード | 高温超伝導体 / ナノブリッジ / 形状効果 / ラチェット / ダイオード |
研究概要 |
23度は11月の研究開始後,加工装置の不具合のため予備実験が延長し,予定の内容について期間を24年度まで延長して実施した。 (1)ナノブリッジ・ダイオードの構造検討および作製: 初年度として,非対称形状の単独ブリッジを用いたデバイス構造およびブリッジ作製プロセスについて検討した。磁場印加はコイルを用いて行った。構造に関して,配線の一部を細くしてブリッジを形成する際,配線の幅方向の位置によりブリッジ特性に違いがある可能性が示唆された。単独ブリッジの臨界電流は数mA~十数mA,磁場による臨界電流の変化率は9%程度のものが得られている。 (2)計算によるブリッジ特性の解析: (1)と並行して,ブリッジ特性を計算により解析するため,時間依存ギンツブルグ-ランダウ(TDGL)方程式を用いた超伝導薄膜中のボルテックスの振る舞いの検討を行った。差分法による計算では,実験と同様の非対称括れ形状においては境界条件の設定に問題があことがわかり,今後の検討課題とした。代わりに類似の構造を持つ,膜中に設けた四角形の穴の周辺でのボルテックスの挙動について,その場所依存性について調べた。その結果,穴の角付近と角から離れた辺付近でボルテックス挙動に違いが見られ,電流分布の違いによるポテンシャル・バリアの違いによるものとして理解された。 (3)整流回路の検討: ダイオードとともに整流回路を構成するインダクタンスおよびキャパシタンスについて,それらの値と使用する交流周波数との関係を等価回路を用いて検討した。また,インダクタンスやキャパシタンスを超伝導膜で実現するために,いくつかの素子形状について電磁界シミュレータによりインダクタンスやキャパシタンスの評価を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度に薄膜加工に用いる装置の故障があり,平成24年度に延長して実験を実施したが,平成24年度に入って試料特性の劣化が見られるようになり,製膜・加工条件の検討,製膜装置の不具合部分の検討などに時間がかかり,計画が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
ナノブリッジ・ダイオードの構造検討および作製については,単独ブリッジの特性評価に基づいて作製プロセスの改善を図りつつ,大きな特性非対称性を得るためにブリッジを2本並列にしたSQUID構造を作製する。このSQUID構造を有するナノブリッジ・ダイオードについて,両ブリッジの形状を独立に変化させた場合の特性や,配線も考慮したブリッジの配置方法についても検討し,最適構造を決定する。計算によるナノブリッジ・ダイオード特性の解析については,時間依存Ginzburg-Landau (TDGL)方程式を用いた数値計算によるシミュレーションを引き続いて行い,ブリッジ内での磁束量子の移動の様子等の検討を行うとともに,SQUID特性についての理論計算も行う。これら計算結果と実際のデバイスの測定結果との比較からデバイス特性の解析を進めるとともに,デバイス設計へフィードバックをかけ,デバイス構造の改善を行う。整流回路の検討については,まず半波整流回路の設計・試作を行い,1交流入力に対して1直流出力を出す整流回路において,模擬負荷での出力電流の確認の後,簡単なSFQ回路へのバイアス電流供給試験を目指す。その後,複数直流出力への拡張を検討する。
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