研究概要 |
本年度は、3次元磁気記録の実現に不可欠な記録層間の静磁相互作用によるクロストーク特性を明らかにする研究を行い、次の成果を得た。 ①【マイクロ波アシスト磁気記録特性の飽和磁化依存性】 磁化反転に最適なマイクロ波周波数は、実効磁場によって決まり、またこの実効磁場は各層の静磁気相互作用磁場に依存する。そこで、膜厚が異なる垂直磁化膜3層(膜厚=5, 13, 14 nm)を1 nmの非磁性層で分離した3層構造媒体について、マイクロ波アシスト磁化反転特性の飽和磁化依存性を調べた。その結果、第1層と第3層の磁化をそれぞれ500 emu/cc、900 emu/ccとした場合、最も静磁気相互作用の影響を受けやすい第2層の磁化を800 emu/ccよりも小さくすることにより、選択書き込みが可能になることがわかった。また、選択的磁化反転を実現するためには、各層のダンピング定数を0.1以下にすることが重要であることがわかった。この値は、媒体材料として想定しているCoCrPt合金やFePt規則合金などで十分達成できる値である。 ②【多層構造媒体の選択的記録、信号再生の計算機シミュレーションと記録媒体の検討】 再生ヘッドとしてスピントルク発振素子を用い、多層構造媒体の各層の磁化を発振周波数の変化として検出できるかどうかをマイクロマグネティクス計算により検証した。その結果、磁性層が3層の多層構造媒体において、選択的な信号記録と信号再生がともに実現できることが確かめられた。なお、信号記録については、媒体の飽和磁化や膜厚、ダンピング定数、磁気異方性エネルギーなどを調整することにより、6層まで積層可能なことがわかった。今後、信号再生技術を改良することが出来れば、従来限界の5倍の記録密度実現を目指した本研究の目的が達成できると考えられる。
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