研究の最終年度にあたり、電圧制御発振器とパワーアンプの高性能化(低動作電圧化、高効率化)のための新規回路の考案と、チップ試作・評価により、特性改善度を確認した。その結果、科研費の当初目標を上回る成果をあげることができた。以下に、電圧制御発振器とパワーアンプの各回路の特徴と性能についてまとめる。 (1) 電圧制御発振器 CMOSプロセスを用いて、0.3~0.5 Vで動作する発振器ICの新規回路考案を行い、また、チップ試作(大学外部に委託)後、特性評価を行った。その結果、最低動作電圧=0.28 Vで、発振周波数=2.25-2.48 GHzを達成した。この動作電圧は世界トップレベルの低動作電圧である。また、動作電圧=0.5 Vにおいては、制御電圧を0.0 V~0.5 Vまで変化することで、発振周波数=2.1~2.3 GHzを実現した。この時の出力パワーは、-7 dBmであった。従って、BluetoothやZigbeeなどの近距離無線通信用として応用できると期待される。電圧制御発振器の位相雑音を評価した結果、動作電圧=0.3 V、発振周波数=2.43 GHz、離調周波数=1 MHzの条件で、-111 dBc/Hzの良好な特性が得られた。 (2) パワーアンプ CMOSプロセスを用いて、0.5Vで動作するパワーアンプの新規回路設計並びにチップ試作(大学外部に委託)と特性評価を実施した。回路方式は、高効率特性が期待されるE級アンプ方式を基本とし、低電圧においても高効率が得られるように改善した。その結果、動作周波数=2.5 GHzにおいて、出力パワー=5 dBm、電力付加効率=29 %が得られた。本効率は動作電圧が0.5Vであることを考慮すると非常に高効率である。
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