研究課題/領域番号 |
23360167
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
阪田 史郎 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (80375609)
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研究分担者 |
関屋 大雄 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (20334203)
塩田 茂雄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70334167)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 無線マルチホップネットワーク / QoS制御 / センサネットワーク / クロスレイヤ制御 / 空間利用効率 |
研究概要 |
本研究は、大規模マルチホップ化に対して、クロスレイヤ制御、優先制御のための送信抑制制御、空間利用効率向上方式、ARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御の4つの方向から研究を進めている。平成24年度は、申請者らの提案も含めた従来研究のレビューと評価に基づき各制御の3つの新方式を提案し、理論的解析とシミュレーションにより、一部提案方式の定性的な優位性を示した。 クロスレイヤ制御では、MAC層からの受信情報を上位層に伝え、ネットワーク層ではその情報に応じて優先制御、さらにトランスポート層ではACKを優先的に送出することでパケット廃棄を回避する制御する方式を提案し、シミュレーション評価を行った。 優先制御のための送信抑制制御では、中継ノードにおける送信バッファを、中継するデータと中継ノードで発生するデータに分けて双方のバッファ量に応じて受信拒否確率を適応的に調整することにより、負荷分散を加えたアドミッション制御の仕組みを提案し、シミュレーションによる定量的な評価を行った。その結果、従来方式に比べて各中継ノードにおけるバッファ量が均等化し、全フローのスループットの和が最大になるという効果が得られた。 空間利用効率向上方式では、ネットワークの大規模化に対応するため、平成23年度に提案した各端末の送信範囲を変更することに加え、指向性アンテナの使用とその角度を60度から120度までの動的な変更による要求QoSの達成、省電力化も同時に実現する新プロトコルを提案した。 ARQ-FECの適切な組合せによるエンド・エンド誤り制御では、ARQ、FEC、ハイブリッド方式に関し、マルチホップネットワークにおけるこれらを組合せた場合の誤り能力を理論的に解明した。さらに、一般のトラフィック特性に近いバースト通信対して高い誤り特性を示すFECに関し、アルゴリズムに応じた最適な冗長度の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、クロスレイヤ制御、優先制御のための送信抑制制御、空間利用効率向上方式、ARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御の4つの方向から研究を進めているが、平成24年度は、クロスレイヤ制御、優先制御のための送信抑制制御については、大規模化ネットワークにおいても通信品質を保証しうる新方式、プロトコルを提案することができた。ARQ-FECの適切な組合せによるエンド・エンド誤り制御においても、大規模化に向けた新方式の提案の裏づけになりうるメカニズムの解明を試みた。さらに、クロスレイヤ制御、優先制御のための送信抑制制御については、提案した方式、プロトコルについてシミュレーションを行い、提案方式の一定の有効性を示すことができた。ARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御においては、一般のトラフィック特性に近い通信環境でのFECアルゴリズムに応じた最適な冗長度の評価ができ、大規模化にも対応できる見通しが得られた。 4つの研究方向に対し、相乗効果を生み出すべく、クロスレイヤ制御と優先制御のための送信抑制制御については、同一のネットワークトポロジにおいて、提案方式の有効性を示すための評価環境も開発した。空間利用効率向上方式とARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御についても、同一の誤り特性のネットワークにおける有効な方式の評価環境開発に着手した。 以上の成果は、平成24年度4月時点における目標とほぼ合致しており、おおむね順調に進展していることがいえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はまず、ARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御において解明を試みた誤り制御のメカニズムの妥当性を証明し、同一の誤り特性のネットワークにおけるFECアルゴリズムに応じた最適な冗長度の評価を行える評価環境を整備した上で、大規模ネットワークにも対応できるエンド・エンド誤り制御方式を確立する。 次に、クロスレイヤ制御と優先制御のための送信抑制制御の、同一のネットワークトポロジを対象とした評価環境と、空間利用効率向上方式とARQ-FEC方式によるエンド・エンド誤り制御の、同一の誤り特性のネットワークにおける有効な方式の評価環境を統合して評価する環境、すなわち同一のネットワークトポロジで同一の誤り特性をもつ大規模ネットワークにおける、エンド・エンド間の通信品質を評価できる開発する。 この統合評価環境において、4つの方向で進めてきた各提案方式を組合せて適用した時に得られる通信品質上の効果を評価する。各提案方式の間には、ネットワークの規模やトポロジ、誤り特性のよっては、トレードオフの関係となるパラメータが含まれており、これらのパラメータの調整を行う。特に、高スループットが要求される動画と低遅延が要求される音声を同時に通信するマルチメディア通信では、このパラメータの調整が有効であり、その有効性も定量的に明らかにすることで、統合評価結果と合わせて、本研究の当初の目標であった、大規模無線マルチホップネットワークにおけるマルチメディア通信の品質制御技術を確立する。
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