研究概要 |
1.秘密通報を持つMIMO2ユーザー放送型通信路についての研究: 送信信号をXとする.放送通信路からの出力信号Y,Zは,いずれも多次元である.送信信号の次元は送信アンテナ数に一致し,受信信号の次元は受信アンテナ数に一致する.復号器2の得る受信信号Zが与えられた下での秘密通報の条件付きエントロピーを安全性の尺度とする.これをある決められた値以上とする条件の下で,高信頼度で送信できる秘密通報のビット数R-1,共通通報のビット数R-2の組(R-1,R-2)の占める領域を伝送率・あいまい度領域(Rate Equivocation Regioh)とよぶ.信号の次元が1の場合は,Csisz\'ar and K\"orner(1978)が研究し,伝送率・あいまい度領域を決定した.次元が2以上で通信路がGauss型の場合はLiuら(2009)が研究している.従来研究では,安全性を高めるために用いる撹乱用一様乱数に対する情報量制約がない.これは撹乱用一様乱数が無尽蔵に利用できることを意味し,現実的ではない.ここではより現実的な仮定として,撹乱用一様乱数の情報量にある決められた上限が設けられている新しい設定を導入し,この設定の下での伝送率・あいまい度領域の具体形を求める.信号の次元が1次元の場合を完全に解決した.また,得られた結果の干渉型コグニティブ無線通信路への拡張に成功した. 1.ガウス型CEO問題の拡張:発生信号が多数のL個のセンサにより観測される状況下で,各センサの観測信号が個別にデータ縮約されて,1か所の情報処理センターへ送られる通信システムを考える.情報処理センターで元のデータ信号を推定するとき,信号の推定精度と観測信号の圧縮率のトレードオフを問う問題が考えられる.発生信号および観測信号がガウス型の場合,この問題は,ガウス型CEOとよばれる.本研究では,ガウス型CEO問題を観測データが,信号がスカラーで観測信号がベクトル型の場合へ拡張した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面の研究に,おいて,乱数制約の下での通信の安全性の研究は,当初完全解決が難しいと予想していたが,これが,予想外の進展で,完全解決を得ることに成功した.こちらの研究の進展は,当初の計画以上である.応用面は,現在,実験環境の整備にあり,やや遅れている.全体を通して,総合的に評価すると区分(2)の評価になると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
理論面の研究は,予想外の進展を見ている.特に,新たにコグニティブ無線通信システムへの拡張が重要であるとの認識に到達した.当初の計画に加えて,こちらの方面の研究にも力を入れる.理論の実装等の応用面の研究が,遅れているが,こちらは,実験環境構築ができれば,研究がもう少し進展すると考えている.具体的には,観測信号を処理して符号化するための環境を実機ノートPCで実現するにあたっての各種ソフトウエアのインストールを行っている.こちらの作業を急ぐ必要がある.こちらの構築に時間がかかる場合は,1台の計算機による仮想通信ネットワーク環境の構築も検討する.
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