研究課題/領域番号 |
23360172
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
大濱 靖匡 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20243892)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多端子情報理論 / 多入力多出力通信網 / 乱数制約 / 伝送率・あいまい度領域 / コグニティブ無線 |
研究概要 |
本年度は、同定通信路符号化について、単一通信路の符号化から新たに多重アクセス通信路の符号化へ議論を展開し,新しい結果を得た。単一通信路の場合の結果は,既にIEEETransaction IT部門の2013年の2月号に掲載されている.本研究は,この結果を2入力1出力多重アクセス通信路へ拡張を試みた.通信路が一般の場合には,情報スペクトル的表現を用いて,通信の限界領域(容量域)の外での伝送同定誤り確率の振る舞いを記述する関数を導出した.この関数を解析することにより,通信路の容量域の外での同定誤り確率の振る舞いを明らかにした.本年度はまた,様々な多端子通信システムにおいて,通信路が無記憶である場合に通信の限界を表す領域の外での振る舞いを解析した.その結果,通信路の限界領域を超えたところでの誤り確率が1に近づくことを明らかにした.さらに,その収束の速さが,符号長の指数関数のオーダーであることを示した.これらの結果のほとんどは,30年近く未解決であったものである.結果の導出には,情報スペクトル理論を基礎とした幾つかの新しい技法を用いる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面の研究において,通信の性能限界を表す許容伝送率領域の外側での誤り確率の振る舞いの解析は,情報理論の分野で30年近い未解決問題であった.これにつき,幾つかの主要な多端子通信システムについて,許容伝送率領域の外での誤り確率が,符号長の指数関数のオーダーで1に収束することを示した.いわゆる符号化の強逆定理とよばれるものもっとも強い形で証明したことになる.上記の未解決問題に見事な部分的解決を与えたことになる.通信の性能限界を表す許容伝送率領域の外側での誤り確率の振る舞いが,ある種の乱数生成問題における生成乱数と目的乱数との近似誤差に関与すること,この近似誤差は,通信の安全性に深く関与することから,得られた結果の情報セキュリティへの応用が今後の重要課題であるとの見通しを得たた.以上から本研究課題において,理論面は,著しい研究成果を上げている.研究課題の理論面に関しては,評価(1)の当初の計画以上に進展しているという評価に該当すると考えられる.応用面は,現在,実験環境の整備にあり,やや遅れている.全体を通して,総合的に評価すると区分(2)のおおむね順調に進展しているという評価になる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度を考慮し,今後の研究の推進方針としては,遅れのみられる応用面の研究を推進し,全体としての当初の目標を超える達成度を実現することを目標の一つとする.その一方で,理論面においては,通信の理論限界の解明から,新しい問題提起が提起された.この問題を考察するには,新しい道具立てが必要になる.現在,まだ研究発表できる段階ではないが新しい道具立ての開発の鍵を握る結果を得た.この研究を発展されることにより,通信の理論限界を解明するための新理論の展開が,期待できそうな状況にある.この理論展開が成功すれば,これは、世界初の全く新しい技術を提供することになる.このように,現在理論面については,研究の急展開を生みそうな状況にある.是非ともこの方向の研究にも力を注ぎたい.理論,応用それぞれにつき,研究推進の具体的方策は以下のとおりである. 理論面:縦列接続型の符号化システムの研究について,時間の相関がある場合へ研究を発展させる.同様の時間相関がある場合について,並列,縦列の混合型の通信ネットワークの研究を展開していく. 応用面:センサ数が3,4個程度の場合について,構築したシステムにより実験を行う.この結果に基づき,より多数のセンサノードの場合,より複雑な通信形態になった場合の通信の物理環境の推定を行う.得られた推定結果を基に通信シミュレータを用いた大規模センサネットワークシステムの通信実験を行う.得られた実験結果より,理論成果の実際の通信システムにおける有効性について検証する.
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