平成25年度は本研究の最終年度に当たり,引き続き異なる伝搬環境となる,広島市立大学,広島大学(盆地),阿蘇山(山岳地)における観測を継続した。その結果,上空数kmに電波ダクトが発生した場合,電波混信が発生しやすくなること,またテレビ放送波と同じ地点から放送されるFM放送波を同時観測することで,テレビ放送波の混信源を特定できることを明らかにした。また電波の伝搬経路をシミュレーションするためのレートレース法を開発し,レートレース法から推定した電波伝搬特性が実測データと良く一致することを確認した。 また研究期間中,韓国からの地上ディジタルテレビ放送波の混信が問題となり,九州大学,九州工業大学の2か所に新たな電波観測系を設置し,その干渉特性と高層大気との関連を調査した。その結果,高層大気中に電波の逆転層が発生すると,韓国からのテレビ放送波が九州地区まで伝搬することを確認した。韓国からのFM放送波の受信レベル変動を同時観測することにより,その混信源を特定できることを明らかにした。 さらに,オーバーリーチ伝搬特性について,高層大気のみならず,電離層反射の影響が問題となり,ラジオ放送および電波時計標準電波の観測系を広島市立大学,美里町,横須賀,および北極圏のキルナに構築し,中緯度と高緯度における比較観測を行った。その結果,電離層擾乱に伴い,ラジオ放送波の受信レベルが大きく変動し,その変動は中緯度より高緯度の方がより顕著であることを明らかにした。今年度得られた研究成果をまとめ論文投稿し,条件付き採録となり,査読委員のコメントを元に加筆修正し学会に再送付した。
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