チャネルド偏光計測法は、偏光状態の波長分布ないし2次元空間分布を、機械的ないし能動的な偏光変調素子を用いずに測定できる方法であり、他の偏光分布計測法には無い高速、小型、高安定などの様々な特徴を有している。本研究では、この計測法をさらに発展させるために、原理の改良と特性の改善を図った。特に、分光偏光計測用チャネルド偏光計の新原理の開発と撮像偏光計測用チャネルド偏光計の基本性能向上についての研究を主たるテーマとした。さらに、スナップショット撮像偏光計測における測定対象の効果的な変調法などについても、研究を行った。 平成25年度でもっとも重要な成果は、新しい分光ミューラー行列測定原理の発明である。前年までの本研究で我々は、チャネルド分光偏光計測が、これまでの波長キャリアだけではなく、空間キャリアを利用しても実現可能であることを示した。そして平成25年度にはこの原理を発展させ、波長キャリアと空間キャリアの両方を利用して新たな分光フルミューラー行列測定法を発案した。この新原理では、偏光計の照明側には波長キャリアを用いる従来型のチャネルド偏光変調器を、一方受光側には空間キャリアを用いる偏光検出器をそれぞれ配置する。そして、波長-空間型の分光器から得られる2次元画像にフーリエ変換処理を施すことによって、測定試料のミューラー行列の波長分布を得る。これまでの分光フルミューラー行列測定ではスペクトル測定を通常16回以上繰り返すことが必要であった。これ対し新しい原理では、一回のスペクトル取得のみで全分光ミューラー行列が測定可能である。本法の有効性は、基礎実験により確認された。
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