研究概要 |
匂い情報を可視化(匂いコードによる数値化)を行うため,匂い物質と匂い検知剤である匂い吸着プローブ(ナノレポーター粒子)を作成した.その際,分子鋳型および匂い物質親和性を持つペプチドを用い,主として水素結合による分子間力を相互作用として匂い検知剤に取り込んだ.プローブの匂い分子選択能力はプローブへの吸着匂い分子をSPME(固相マイクロ抽出)法によって濃縮サンプリングし,ガスクロマトグラフィ質量分析器(GC-MS)を用いて吸着分子の組成を分析し,匂い分子選択性があることを確認した.また,GC-MSは可視化対象の匂い物質を決定する際にも用い,例として人の掌から得られる匂い物質について分析を行い,有機酸類を候補として絞り込んだ.匂い検知剤はこの有機酸類を対象として構築を進め,有機酸分子選択性を得ている.一方で,匂い検知プローブとしてバニロイド親和性を持ち金結合性を有するトリペプチドを合成し,導電性ナノファイバ(ポリアニリン)上に金ナノ粒子を介して結合させた.結果として得られた匂い分子認識部位を持つ低次元導電層薄膜を櫛型電極上にキャストし,これを匂いセンサ電極として,バニリン選択性がある導電性変化を得た.この際の導電性変化は金ナノ粒子を介した分子認識性ペプチドと導電性ナノファイバとの縦カップリング,ナノファイバに沿った横カップリングによるものと考えられる.匂い検知ナノレポーター粒子に関しては,さらに高い選択性を目指し,匂い物質を抗原抗体反応を用いて特異的かつ高感度に検出するため,蛍光検出システムの構築を行った.抗体を蛍光標識するとともに,金基板上に形成した自己組織化単分子膜に匂い物質の類似物質を固定化した.これらの相互作用を蛍光により検出することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匂いを測定する受容素子として,金結合性ペプチドとポリアニリンナノファイバを用いたセンサについて,その作成技術を構築し,匂い物質応答と匂い物質選択性について達成できており,当初の計画を達成した.
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今後の研究の推進方策 |
匂い分子受容部とカップリングされた導電性ナノファイバを構築できたため,今後は,その動作原理を明確にし,より選択性と感度が高い受容部とトランスデューサ部の設計と作成を推進する.さらに,匂いコード情報を検知できるマルチチャネルセンサに相当する二次元アレイ電極を構築する.
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