研究課題/領域番号 |
23360198
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野村 卓史 日本大学, 理工学部, 教授 (50126281)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 飛来塩分 / 移流拡散解析 / 可視化実験 / 3次元流れ解析 / 重力効果 / 塩分ミスト |
研究概要 |
1.煙濃度の移流拡散解析法の開発 有限要素法による移流拡散解析法の精度向上と飛来塩分粒子の飛来挙動について粒子運動効果を導入する方法について前年度に引き続き検討した。移流拡散解析については乱流拡散係数を用いることで,正方形角柱を対象とした風洞実験における煙濃度の可視化データの特性を,特に剥離せん断層内の挙動の特徴を精度よく表現できることを確認している。実験データとの対比では,後流で2つの剥離せん断流が互いに干渉する付近で定量的に不十分であったが,これは移流拡散解析に与える移流速度が,2次元k-ipsilon モデルによる流速変動を用いているため,後流の巻き込み長さが実際より長いためである。この問題を改良するため,本年度はVMS法 (the variational multi-scale method) による3次元流れ解析を実施した。この解析には本年度購入した並列計算機を用いた。この解析は現在継続して進めているが,より実験に近い変動流が得られる見込みである。 2.移流拡散解析への粒子効果の導入 飛来塩分の挙動には重力効果や物体表面の付着など,粒子として扱われるべき要素がある。本年度は重力効果について,移流拡散方程式の移流項に重力効果に関する補正を与える独自の方法について検討し,マクロな濃度分布が重力による沈降に相当する変化をすることを確認した。 3.風洞実験における塩分ミストの注入 飛来塩分が物体に付着する過程をモデル化するための実験データを得るために,本年度は塩分ミストを風洞に注入する実験を行った。具体的には超音波加湿器で塩化ナトリウム水溶液を風洞中に噴霧した。風洞模型(正方形角柱と橋桁模型)の表面にあらかじめろ紙を貼付し,ミストを噴霧した後のろ紙を精製水で拡販し,精製水に溶融した塩分量をイオン系で計測した。この方法により,風洞模型の表面部位によって付着した塩分の量が異なることを定量的に評価できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,数値解析と風洞実験のそれぞれに独自の方法を開発しているが,本年度はその両方に進展があった。いずれもこれまで不十分だったところを改善するものであり,おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.塩分ミストを注入する風洞実験 塩分ミストを注入する風洞実験により,飛来塩分が物体表面に付着する現象に関する有効な実験データを獲得することができる見通しを得たが,本年度,ミストを注入するために超音波加湿器を用いた。注入方法の精度を上げる必要があるので,次年度は専用の粒子発生器を用いることとする。 2.移流拡散解析法の改良 次の2つの項目について改良を進める。(1)3次元流れ解析による移流速度分布の改善のために,VMS 法を用いた有限要素法3次元流れ解析により,特に物体後流領域が改善された解析結果を得る。(2)塩分粒子の付着モデルの開発のために,移流拡散解析に粒状体的挙動を導入し,特に物体表面に当たった粒子の付着特性をモデル化する。これら2項の開発に際しては1.で求めた可視化画像データを活用する。
|