研究概要 |
河川流量は河川・水資源計画や水循環を考える上で極めて重要な水文量であることから,安全かつ確実な河川流量観測法の確立は,世界的な喫緊の課題である.これまで様々な河川流量の計測法が考えられてきたが,多くの欠点や制約を抱えており,流量観測の高度化が強く望まれている.そこで本研究では,音響トモグラフィー法を用いて低水から洪水まで連続して流量を自動計測できる技術の確立を目指し,超音波の周波数や送受波器の設置方法,河床材料の違いによる河川音響トモグラフィーシステムの適用性などを明らかにする. 2種類の周波数(10kHzと25kHz)対応に拡張した可搬型の河川音響トモグラフィーシステム(FATS)を2組製作した.礫床河川である江の川(三次市尾関山水位観測所付近)の護岸法尻に1対のトランスデューサーを固定して流量の連続観測を行い,浮遊土砂濃度や水深の変化がFATSの適用性,SN比に与える影響を明らかにした.20~500m3/sの範囲の流量を計測し,プロペラ流速計,ADCPによる横断移動計測や水位流量曲線の結果と比較して精度検証を行い,FATSの信頼性を確認した.残念ながら洪水時は,河床上に固定したトランスデューサーが流されたため,データは取得できなかった. 平均水深が約0.6m以下では,水深が浅くなるに従ってFATSのSN比は低下し,平均水深0.3m程度が計測限界であった.また,浮遊土砂濃度が高くなるほどSN比は低下したが,100ppm程度の濃度では十分なSN比が確保され,計測に支障をきたすことはなかった. 浮体に取り付けたトランスデューサーを水面付近に係留して,流量を測定する係留式計測法をテストした結果,本方法でも流量計測が可能であることが確認された.10kHzトランスデューサーの現地試験は,トランスデューサーハウジング内に浸水が発生したため,データは取得できなかった.砂河床である太田川放水路における流量計測は順調であった.
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今後の研究の推進方策 |
25kHz音波による実験は順調に進展しているので,今後は10kHz音波による実験を実施する.また,トランスデューサーの設置方法を改良し,さらに大きな流量の出水,洪水の観測を成功させる.
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