研究概要 |
河川に繁茂する木本類や草本類,沈水植物は,洪水時や平水時における流れや物質輸送に大きな影響を及ぼすことが知られており,それらの管理方法の確立が求められている。平成23年度には現地観測,室内実験,数値解析を行い,次のような知見を得た. 1)高水敷上に模擬樹木群を有する複断面開水路において,樹木群が流れの抵抗に及ぼす影響を検討した。その結果,樹木群が流下方向に連続して存在する場合より点在する場合の方が,同一の流量に対して水深が小さくなりうること,すなわち,樹木群の配置によっては洪水が流れやすくなることを初めて示した。 2)乱流応力/フラックスモデルとして,非線形k-εモデルとDaly-Harlowモデルを用いた3次元非定常解析を開発し,室内実験結果と比較して,平均流やスカラー輸送を合理的に算出できることを示した。一方,水面付近の二次流の再現性の向上や物質輸送に関する信頼性の高い実験データの蓄積がさらに必要であることを確認した。 3)駆除が求められている沈水植物のオオカナダモが流れや土砂輸送に及ぼす影響を理解するために,江の川水系上下川と室内水路において,平均流速や乱れ,河床堆積物等の計測を行った。そして,オオカナダモ内部では流下方向の流速や乱れが急激に低下すること,オオカナダモの下流端の上部で最も大きな剪断応力がオオカナダモに作用すること,成長したオオカナダモの動揺は大きくないこと,群落内部では細粒土砂の捕捉が顕著であることを見出した。 4)樹木群を有する流れに対する数値解析モデルを再構築するために必要不可欠なデータベースの構築を目標として,埋め込み境界法を用いた直接数値解析手法(DNS)の開発を進め,円柱群を有する流れに対する検証までを終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹木群を有する複断面水路の実験については,次年度に予定していた蛇行水路を製作し計測を開始しているので,計画以上に進展している。また,乱流モデルを用いた数値解析手法の開発も順調に進んでいる。沈水植物の影響に関する現地観測と土砂輸送に関する室内実験の実施についても,計画通りに実施して,柔軟な植物周りの流れとの共通性と相違性を特定するに至っている。しかし,埋め込み境界法を用いた直接数値解析手法の開発がやや遅れており,樹木群を有する乱流場に適用可能なLESの開発は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
樹木群を有する流れの実用的な解析手法である,乱流モデルを用いた数値解析手法(RANS)については,高精度化と高速化を進める。また,樹木群の乱れ場に及ぼす影響のモデル化に関しては,DNSやLESの成果を積極的に取り入れ,汎用性を向上させるために再検討を行う。そのためにも,より密接な研究協力体制を築き,DNS,LESを大きく進展させる方針である。樹木群を有する複断面蛇行水路を用いた室内実験では,信頼性の高いデータを集積する。また,沈水植物周りの流況や揺動については,オオカナダモの実物および柔軟な模型植物を用いた実験に基づき,既往の研究成果を活用しながら,現象のモデル化を進める。
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