研究課題/領域番号 |
23360215
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河原 能久 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70143823)
|
研究分担者 |
横嶋 哲 静岡大学, 工学部, 助教 (80432194)
椿 涼太 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80432566)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 開水路乱流 / 樹木群 / 沈水植物 / RANS / LES / 大規模水平渦 / 流れの抵抗 / 物質輸送 |
研究概要 |
河川に繁茂する植生は,洪水時や平水時における流れや物質輸送,環境保全に大きな影響を及ぼすことが知られており,その管理方法の確立が求められている.平成24年度には室内実験,現地観測,数値解析を行い,次のような知見を得た. 1)単断面直線水路に模擬樹木群を設置し,樹木群の位置や形状が流れの抵抗や大規模水平渦に及ぼす影響を系統的に検討した.その結果,樹木群の占める面積が同一であれば,樹木群が側壁に沿う場合に流れの抵抗が最小になること,さらに,樹木群が流下方向に連続して存在する場合より,点在する場合や流下方向に幅が変化する場合の方がさらに抵抗が小さくなることを見出した. 2)複断面蛇行水路の高水敷先端部に沿って樹木群を設置し,水位や流速3成分を計測した.その結果,樹木群が水位分布を変化させ,それが高水敷上の流速分布に大きな影響を与えること,一方,低水路内の主流に及ぼす影響は限られていることを見出した. 3)沈水植物のオオカナダモが流れや土砂輸送に及ぼす影響を把握するために,上下川において通年の繁茂状況の観測とフラッシュ放流前後の繁茂域・バイオマスの変化を調査した.また,現地においてオオカナダモの引張試験を行って切断強度を計測するとともに,室内実験において流水中のオオカナダモに作用する流体力を計測した.それらの結果に基づき,洪水中にオオカナダモを切断させる接近流速を算出した. 4)非線形k-εモデルと植生モデルを組み合わせた3次元非定常解析を行い,直線水路で見られた大規模渦や平均流速を合理的に算出できることを示した.また,LESが,大規模渦やそれに伴う水面変動,平均流速をほぼ再現することを示した.ただし,LESで用いる樹木群の抗力係数の決定方法に課題があること,実河川に適用するためには樹木群モデルを改良させることや柔軟植生モデルの開発に取りかかるべきことを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹木群の形状や配置を系統的に変化させて信頼性の高い実験データを取得することに関しては予定通りである.しかし,柔軟植生の揺動実験について,より現実的な実験条件に変更する必要があること,また,数値解析との比較より,樹木に作用する流体力を直接計測することが必要であることが判明したため,新たな実験を行う必要がある. 数値解析については,乱流モデルの改良とそのモデルの適用性の検討は予定通りに進んでいる.一方,LESにおける樹木の抗力係数の計算方法の検討,DNSによるデータベースの構築を急ぐ必要がある.
|
今後の研究の推進方策 |
実験に関しては,1)樹木群中の個別の樹木に作用する流体力を直接計測し,数値モデルの根本的な検証に活用すること,2)柔軟な植生や揺動する樹木群に対する信頼性の高い実験データを取得し,数値モデルをさらに発展させることを行う。既往の研究成果と合わせて,実験に基づくデータベースの構築を進める。 一方,数値モデルについては,1)並列計算用のDNSコードを開発し,樹木に作用する流体力と樹木配置の関係の解明,2)DNSデータベースを活用したRANSモデルやLESで使用する樹木モデルの再検討を進める。そして,RANSモデルやLESの適用性の向上を検証する。
|