研究課題/領域番号 |
23360218
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森杉 壽芳 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 名誉教授 (80026161)
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研究分担者 |
河野 達仁 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (00344713)
武藤 慎一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90313907)
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キーワード | 時間価値 / 人流・物流 / 費用便益分析 / SCGE / 交通政策 / 観測可能性 / 時間節約便益 / 交通供給者の時間価値 |
研究概要 |
研究目的:(1)人流および物流の需要者および供給者の時間価値を交通需要・供給および関連諸価格・所要時間の関数で表現すること。(2)その時間節約便益計測への応用 研究実績1 (理論分析):以下の定理を導いた。(1)個人の時間価値:時間価値は資源としての時間価値と商品としての時間価値の和となる。このとき人流の資源(商品)としての時間価値は,分子が(需要の(効用に与える)時間微分係数+需要x需要の総利用可能時間微係数(÷効用に与える時間)),分母が(需要の価格微分係数+需要x需要の所得微係数)の比と表すことができる。なお,物流の資源としての時間価値はゼロである(2)業務交通の商品としての時間価値:商品としての時間価値は分子が(需要の(生産性に与える)時間の微分係数-需要÷(生産性に与える)時間),分母が需要の価格微分係数の比と表すことができる。(3)交通供給者の時間価値とモード別時間価値:供給者の時間価値は限界的所要時間削減による限界運送サービス費用の低減分で定義される。モード別の時間価値は,(モード需要の時間価値+供給者の時間価値)となる。(4)時間節約便益計測公式の改良:収穫一定で補償均衡下でのモード別時間節約便益は(モード別均衡需要関数(=供給量)Xモード別時間価値関数)を所要時間の変化分に関して積分した公式となる。 研究実績2 (実証分析):(1)上記(1)の公式を社会実験のデータに適用して高速道の資源としての時間価値の値を推定した。線形需要関数の場合の時間価値は2,450円と他の研究結果に近い値であった。(2)上記(3)の公式を高速便益計測用のSCGEに適用した。供給者時間節約便益は約40%を占めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論分析については、計画調書の作成時と交付申請書の作成時に定式化を試みた。このため、上述の公式の誘導は順調に行うことができた。今年度当初の予想と違う成果は、交通供給者の時間価値の定義と観測可能性の証明である。時間価値観測実証分析については、ちょうど、高速道路料金の社会実験の結果が公表されたのでまずはパイロット的な推定が可能となった。SCGE実証分析では、従来の研究と異なり、交通部門の明示的な導入に成功した。そして、交通部門の生産関数が交通所要時間に関する1次同時性を導入して時間節約便益を計算することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1.離散選択モデルのおける資源としての時間価値と商品としての時間価値 (1)理論分析:第1に所得制約と時間制約の下で複数の離散選択を行うモデルの定式化を行う。第2に時間価値を最大効用の期待値(S)一定下における任意の選択枝の価格と所要時間の限界代替率で定義する。第3に資源(商品)としての時間価値を最大効用の期待値(S)一定下における所得と利用可能時間時間(特定の選択肢の所要時間)の限界代替率で定義する。このとき資源(商品)としての時間価値は,分子が[選択確率x選択肢の効用の総利用可能時間微係数(所要時間の限界効用)]の和,分母が[選択確率x選択肢の効用の所得微係数(商品時間価値の場合も同じ)]の和の比になることを証明する。 (2)実証分析:離散選択モデルでは選択をしたときの確定効用は既知としているので効用関数形によって上記2つの時間価値を規定することになる。第1に既往の研究のメタ分析をすることにより、時間価値の値の範囲と理論的に正しい時間価値の定義に沿った分析であること等の検討をおこなう。たとえば、コンテナーの時間価値をルート選択のモデルより計算している例があるが、これは、結果として荷主の商品としての時間価値を推定していることになる。 2.SCGE研究 (1)主要ネットワークの(ODではなく)ルートに対する交通需要と運送業を定式化する。 (2)プロジェクトによって生成される商品としての時間価値関数の特定化を試みる。
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