研究課題
平成24年度は、試作した評価モデルの高度化を試みた。その準備作業として海外先進事例都市への追加調査(現地調査もしくは資料整理)を行った。高度化に際してはピーク時やオフピーク時あるいは早朝や深夜といった異なる時間帯でのバス運用を評価できること、幹線輸送と支線輸送、都心直結型の輸送と郊外拠点間連結型輸送、施設送迎輸送等の異なる路線形態に対応できること、そして、それらを組み合わせた路線形態に対応できることをめざした。追加調査の対象はブラジルのクリチバ市、イギリスのケンブリッジ市、コロンビアのボゴタ市、韓国のソウル市である。クリチバ市では、障害者施設送迎輸送システムについての詳細調査と路線網の経年変化実態を調査し、乗継ターミナルを駆使した路線体系の効率性を確認した。ケンブリッジ市では、世界最長のガイドウェイ区間を有する幹線バス路線での輸送実態を視察し、事業者間調整の困難さが運行スケジュールや運賃体系に与える影響を把握した。ボゴタ市では、需要動向にあわせて幹線路線網や急行運転での停車駅構成を逐次見直す管理手法を学んだ。ソウル市ではICT技術活用の効果を学ぶとともに、優先信号制御導入への課題を整理した。以上の他、国内でBRT的とも言える運用をしている幹線バス路線として、藤沢市慶応湘南キャンパス線、名古屋市新出来町線、鹿島鉄道跡地再利用線、JR東日本気仙沼線の調査(現地調査あるいは資料整理)を実施し、幹線輸送モデルの精緻化への課題を得た。これらの成果をもとに、時間帯によるサービス形態の差異の考慮、路線形態による差異の考慮、組合せの効果をモデルに組み込んでいく課題を整理した。シミュレーションモデルについては、幹線輸送での重要要素であるバス停停車時間の組み込み方の改良、手前のバス停での乗降人数に対応した高度な優先信号制御手法等新技術の組み込みへの課題を整理できた。
2: おおむね順調に進展している
追加調査を実施し、BRTおよび都市交通戦略に関する多くの知見を得た。一方で、シミュレーションモデルの適用について、課題は概ね整理できロジックも明確になってきたが、作業が若干残っており、ほぼ②に近いレベルと言える。以上を総合して(2)と評価した。
事例についての詳細調査はほぼ一段落した一方で、新規にBRT導入を検討している事例が多くあり、そこでのフィールド調査と連携しつつ研究成果をまとめていくことが有用と考え、当初の研究計画をベースに進行するが、ラオス国ビエンチャン市でのケーススタディを加えて、開発途上国大都市でのバス輸送改善に資する成果が得られるように最終年度の研究を推進していく。研究計画の変更などは行わない。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
都市計画論文集
巻: No.47No.3 ページ: 343-348
土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.68, No.5 (土木計画学研究・論文集第29巻)
巻: Vol.68, No.5 ページ: 857-866
土木計画学研究発表会・講演集
巻: No.46 ページ: 76-77