1)救急車の配送拠点配置モデルの構築 前年までに通常の物資配送を行うトラックの災害時の配車配送計画について検討しているが、今年度は、負傷者を運搬する救急車の配送拠点配置モデルを構築した。この問題については、救急車配置問題(Ambulance location problem)として従来から研究が行われている(Brotcorne et al. (2002)など)。しかし、従来の研究は、所要時間の変動を考慮していない場合が多く、所要時間として1つの値を用いている場合が多い。ここでは、所要時間の変動を考慮した救急車の配送拠点配置モデルを構築した。このモデルを大阪の道路ネットワークに適用し、所要時間が大きく変動する場合の救急車の配送拠点の最適配置について検討を行った。 2)平常時・災害時における都市物流施策の評価 本研究で開発した配車配送モデル、マルチエージェントモデルを実際の道路ネットワークに適用し、平常時および災害時において、トラックの流入規制、トラックの推奨経路の設定、ロードプライシングなどの都市内物流施策を実施した場合の評価を、コスト、渋滞、環境などの多方面から行った。本研究において開発したモデルにおいては、災害時における突発事象の発生による影響を中心に開発を進めたが、従来から交通渋滞および環境に与える影響については研究を行っており、それらをまとめて、総合的に都市物流施策の評価を行うことができる。施策の評価を通じて、荷主、物流事業者にとって効率性の面で便益があるのみならず、社会的に渋滞緩和、環境改善、突発事象に対する柔軟性の向上に便益がある都市物流システムを構築する方法論を明らかにした。
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