研究概要 |
公共交通と補完/代替関係にありうるサービスとして,食料を調達するという活動については移動販売,買い物代行サービス,商品配達システム,診療を受けるという活動については往診,健康相談の出張などの事例を把握した.この事例調査は,次年度も引き続き継続する.また,ケイパビリティアプローチにおいて提案されている生活機能のリストを把握するとともに,まずは,公共交通との関連性が強い,買い物や通院などを想定してモデルを構築するアプローチとすることを確認した. 次いで,人々の心身機能をどのように定量化するかについて検討した.まずは,どのような調査データが一般に広く用いられているのかについて整理したところ,「老研式活動能力指標」や厚生労働省の「チェックリスト」と呼ばれる25項目からなる質問票があげられた.そこで,これらの調査データを用いた心身機能の定量化手法を因子分析と離散選択モデルを組み合わせて提案した.その上で,いくつかの自治体のデータを収集し,心身機能別の公共交通の抵抗感や外出型/訪問型の生活支援サービスの選択構造を明らかにした.また,外出型サービスの一つの形態として送迎を取り上げ,送迎者ならびに被送迎者の活動時間パターンに基づいてその成立可能性を評価するモデルを構築した. 加えて,公共交通と補完/代替関係にありうる生活支援サービスを列挙し,それらのニーズをアンケート調査によって収集した.その際,これらの生活支援サービスの一つとして公共交通サービスを含めた.これに関する予備的な検討によると,外出型である公共交通サービスのニーズは訪問型によるサービスのニーズよりも低いという結果を得ているが,属性別の細かな検討を要するという課題を明らかにした.また,公共交通の待合時間に着目した補完サービスの一つを提案し,その有効性に関する研究に着手した.
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度より,ローカルニュースで本研究が着目しているような生活支援サービスの試みが様々な自治体で見られるようになっている.このため,事例収集を引き続き行い,これらのサービスを研究に取り込むことができるようにしておくことを念頭におきたい.そのためにも,研究代表者・分担者で各地の取り組みの意見交換の機会を意識して設けておくことが必要と考える.
|