研究課題/領域番号 |
23360224
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤原 章正 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (50181409)
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研究分担者 |
張 峻屹 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (20284169)
塚井 誠人 広島大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (70304409)
桑野 将司 神戸大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70432680)
力石 真 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 特任助教 (90585845)
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キーワード | 高齢化ニュータウン / パーソナルモビリティ / GPSパネル調査 / 地区交通計画 / ソーシャルネットワーク / 潜在能力アプローチ |
研究概要 |
本年度は広島市の郊外に立地する高陽ニュータウンを対象に社会実験を伴うモニター調査を実施し、パーソナルモビリティ(以下、PM)の導入によるモビリティ改善効果の計測を以下の通り試みた。 (1)PM保有・利用による行動変容を観測するために、約50名の高齢者モニターのうち10名にPM(電動アシスト2輪車、電動アシスト3輪車、電動カート)を貸し出し、GPSを利用した2週間の交通行動調査を実施した。なお、PM導入効果を縦断的に確認するために、昨年度調査の被験者に再度協力を依頼、パネル調査として本調査を実施した。調査結果より、PM導入による地区内逗留数(100m以上移動し、3分以上滞在した箇所数)の増加は観測されなかったものの、地区内トリップの割合が昨年度調査結果に比べて増加していることが明らかとなった。 (2)PM保有による個々人のモビリティ改善効果を計測するために、アマルティア・センの提案している潜在能力アプローチに基づくモビリティ改善効果の計測方法を提案した。提案モデルにモニター調査データを適用した結果、今回の調査データでは、1)PM保有によるモビリティ改善効果は観測されなかった、2)家族人数やNT内の友人数といったソーシャルネットワークの密度が高ければ高いほどモビリティは高いことが示唆された。 (3)PMの普及を予測するため、PM保有・利用意向に関するSP調査を実施した。友人・知人の行動が個人の意思決定に及ぼす影響を定量的に分析するために、複雑ネットワーク分析を応用して対象地域内での友人・知人関係を表現するとともに、友人内普及率の影響を考慮した離散選択モデルを構築した。分析の結果、PMの利用意向において友人や知人への同調行動が存在すること、同調行動はPMのレンタル価格を5%低下させるのと同等の効果を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、当初予定していたパネル調査の設計・実施、データの加工・処理に加えて、平成24年度に実施を予定していたモデルシステムの構築を一部完了した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果より、NT内のモビリティ確保においては、コミュニティやソーシャルネットワークをうまく活用する必要性が示唆された。特に、限られた財源で一定程度のモビリティを確保するには、コミュニティや家族・友人といったインフォーマルなリソースを活用することが求められる。今後、研究計画に従い研究を進めると同時に、モビリティ確保における社会的ネットワークの役割を明らかにする研究を平行して進めていく予定である。
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