研究課題/領域番号 |
23360231
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大下 和徹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90346081)
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研究分担者 |
高岡 昌輝 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252485)
神田 英輝 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90371624)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 畜産廃棄物 / 液化ジメチルエーテル / 動物医薬品 / 脱水 / 乾燥 / 省エネルギー / 再利用 / 燃料化 |
研究概要 |
発生量の大部分が堆肥化され、畜産の盛んな地域では過剰供給となっている家畜糞の有効なエネルギー利用の方法が注目されている。本研究では、固形燃料として利用できる乾燥物を得ることを念頭に、液化DMEを用いた常温での家畜糞の省エネルギー脱水・乾燥プロセスを構築することを目的とした。 まず、平成23年度の流通式液化DME脱水・乾燥実験の結果から、本法のエネルギー消費量、所要面積を試算したところ、既存の発酵+ハウス乾燥+熱乾燥法と比較して所要面積は1/6以下に、かつ臭気問題も改善できると推算された。ただしエネルギー消費量は既存法が602kJ/kg-H2Oであったのに対し、本方式では1109kJ/kg-H2Oと高かったため、更なる省エネルギー化が必要である。対策は、低温廃熱源の利用が想定される。本法における所要エネルギーは、主に液化DMEの加圧液化・減圧気化(沸点-25℃、常温0.6MPaで液化)に由来するため、従来法よりも低温廃熱でのエネルギー消費量の改善効果が高いと考えられる。 次に、流通式実験装置に代え、バッチ式実験装置を用い、常温下、液固比30mL/g、無攪拌で、含水率約80%の牛糞を60分処理した結果、含水率33.2%まで脱水された。流通式実験で同じ結果が得られた条件と比較すると、バッチ式では液固比を10mL/g低下でき、今後攪拌を加えることで更なる効率化(時間短縮、低液固比)が期待できた。 本法での牛糞由来の動物医薬品の挙動については、まず分析に関する文献調査を行い、酢酸アセトニトリルを溶媒とした超音波抽出の後、USEPAのLC/MS/MSによるPPCP測定メソッドを参考にして行うこととし、対象は使用頻度が高く、性質の異なるものと文献で多く調査されているものを絞り込み、テトラサイクリン系、ペニシリン系、スルホンアミド系、マクロライド系、フルオロキノン系を測定することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究にて設定している実施すべき6項目について、これまでの達成度を以下に述べる。 まず、 ①家畜糞の基礎物性や発生量の把握については、概ね順調に進展しており、肉牛糞を主対象としつつも、乳牛糞、豚糞、鶏糞をはじめとする種々の家畜糞について、含水率、有機分、元素組成、発熱量等のデータを蓄積している。また肉牛の成長にともなう組成の変化についても約2年間のデータを蓄積している。次に、②液化DMEによる家畜糞尿の脱水・乾燥特性の把握についても、概ね順調に進展しており、これまでに、肉牛糞を対象とした液化DME流通式脱水・乾燥実験について望ましい条件を明らかにするとともに、より実用化イメージに近いバッチ式での脱水・乾燥実験を進めている。③液化DMEによる家畜糞尿中の水分抽出メカニズムの解明とモデリングについても、概ね順調に進展しており、これまで示差走査熱量計を用いた牛糞中の難脱水成分の定量についてデータを蓄積し、水分抽出メカニズムを下水汚泥と比較する形で推定した。次に、④乾燥物(バイオマス燃料)、タール、排水の性状の把握については、現在、やや遅れている。数条件の脱水・乾燥実験で生じた乾燥物やタールの発生量は把握し、マスバランスも流通式、バッチ式双方の実験系にて整合しているが、脱水・乾燥物の発熱量の把握および自己発熱性の評価は未着手である。⑤液化DMEの回収・再利用性の把握については遅れている状態である。下水汚泥や汚染底質については、5回の繰り返し利用によって、液化DMEの脱水・乾燥能は低下しないことが確認できているが、牛糞を対象とした場合は未着手である。最後に、⑥動物用医薬品の挙動把握はやや遅れている状態である。牛糞中医薬品の抽出前処理・分析方法の決定、および対象医薬品の絞り込みまで進んでいるが、実測定は未着手である。 以上、研究全体としては、自己点検によりやや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にて、当初設定した実施すべき6項目について、平成25年度(最終年度)の研究の推進方策を以下に述べる。 まず、①家畜糞の基礎物性や発生量の把握については、基礎物性に関しては十分なデータを蓄積済みであり、平成25年度は発生量を整理することで、循環資源としてのポテンシャルを明らかにする。次に、②液化DMEによる家畜糞尿の脱水・乾燥特性の把握については、平成25年度でバッチ式の液化DME脱水・乾燥実験を行い、最適な脱水・乾燥条件、抽出速度定数等を明らかにする。次に、③液化DMEによる家畜糞尿中の水分抽出メカニズムの解明とモデリングについて、平成25年度は、②の実験結果を受けて、水分抽出メカニズムの詳細な解明とモデリングを進める。特に難脱水成分の定量には、示差走査熱量計(DSC)に加え、TG-DTAによる測定手法を組み合わせ、精度の向上を図る。④乾燥物(バイオマス燃料)、タール、排水の性状の把握に関しては、タールや、排水性状を明らかにするとともに、液化DMEによる脱水・乾燥物の発熱量の把握および自己発熱性の評価を中心に行い、乾燥物の特性を明らかにする。自己発熱性の評価には、TG-DTAによる測定により実施する。次に、⑤液化DMEの回収・再利用性の把握については、実験が遅れており、5回の回収・再利用を目標に液化DMEの脱水能の評価を行う。最後に、⑥動物用医薬品の挙動把握については、模擬試料を用いた回収率実験から開始し、実試料への適用まで進め、牛糞中動物医薬品の定量、および液化DME・脱水時の抽出速度や抽出率、排水・タールへの分配率を明らかにする。 以上、平成25年度に実施する項目として、特に遅れている項目④、⑤、⑥に対しては優先的に実験・評価を進めていく。
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