研究課題/領域番号 |
23360235
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
|
研究分担者 |
門上 希和夫 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60433398)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 電子産業排水 / 嫌気処理 / メチル化合物 / メタン生成古細菌 / 排水回収 / 無加温運転 / フロック形成促進 / 担体 |
研究概要 |
嫌気性消化汚泥を種として、常温(約23度)でテトラメチルアンモニウム(TMAH)とイソプロピルアルコール(IPA)をそれぞれ唯一の炭素限として、およそ1年に亘って嫌気のバイオリアクターを用いた連続培養を行った。いずれのリアクターでも、4 gVSS/L程度の汚泥濃度で従来の活性汚泥システムと同程度の反応速度(1-3 kgCOD/m3/d)が得られた。 このことから、今まで必須と考えられていた中温(35度)の条件でなくとも嫌気プロセスを使って実用的なスピードでTMAHやIPAを含む電子産業排水を処理できると予想された。 検討したリアクターは浮遊型の「嫌気活性汚泥」を用いたもので、これはTMAHやIPAを基質とした微生物はUASB法で見られるようなグラニュールを形成しないことを念頭に置いたものである。また、本実験で増殖した微生物群は、通常の活性汚泥のようなフロックを形成しなかった。そこで、分散増殖するこれらの微生物を固定するために、水酸化アルミニウムと微細マグネタイトを混合した無機フロックをリアクターに添加し、回分運転による連続培養を進めた。 無機フロックを添加することで固液分離度合いは大幅に向上したが、汚泥の一部は上澄液にもわずかに残存することも明らかになった。これは、回分運転時に添加した基質が高濃度であったため、相対的に液の汚泥濃度も上昇したことが原因の一つと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近の電子産業で多用される代表的な物質2種(テトラメチルアンモニウム、イソプロピルアルコール)について、当初の予定どおり嫌気条件で分解可能な微生物群を集積した連続実験を進めることができた。今年度の特筆する成果の一つは、無加温(常温=約23度)であっても通常の活性汚泥システムと同程度の反応速度(1-3 kgCOD/m3/d)が得られることを実験的に示したことである。今まで実用化されている嫌気処理は、全てが35度以上にリアクターを加温するもので、電子産業の工場のように常温で排出される多量の排水処理には適さないと考えられていた。従って、今年度の成果は実用化に向かう着実な一歩と判断している。 一方で、集積した嫌気微生物群はフロック形成能が乏しく、そのままでは清澄な処理水を得ることができないことも明らかになった。これは、膜濾過モジュールを採用すれば、原理的には解決可能であるが、市場競争力の高い新たなプロセスを実用化するためには、かなり電力を要する膜濾過モジュール以外の方法を開発する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
バイオリアクターの微生物群(汚泥)を省資源的な方法で固液分離可能なモジュールを開発することが今後の研究における重要要素の一つになる。これについて、無機フロックに分散菌体を固定して沈降させる方法を検討していく。また、対象とする有機物の生物分解において、中間体の生成度合いを評価することも排水処理プロセスの開発には必須の要素である。 また、今年度までの研究によって、テトラメチルアンモニウムの分解過程において極めて微量の中間体(4種)が生成することが同定されたため、これら成分の代謝パターンを化学工学的に解析し、プロセスを設計するためのノウハウとして数学モデルとして把握していく。
|