本研究の目的は、免震部材の多次元的力学挙動の解明と免震建物の地震時挙動評価手法の確立である。この目的に沿い、3年間の研究期間において①免震部材の多次元連成力学モデルの作成、②多次元地震動入力に対応した免震建物の地震応答解析システムの開発、③多次元入力地震動を考慮した免震構造の合理的設計法の構築を目指した。 平成25年度は前年度に開発した免震部材の多次元連成力学モデルおよび免震建物の地震応答解析システムを用いて、多次元地震動入力を受ける免震建物の地震時挙動の定量的評価と免震構造の合理的設計法について検討した。免震部材の多次元連成力学モデルについては、新たに開発された低弾性タイプの高減衰積層ゴムにも対応できるように改良を加えたことで、国内で使用される履歴減衰型免震支承(高減衰積層ゴム、鉛プラグ入り積層ゴム、弾性すべり資料)をほぼ網羅するに至った。この力学モデルを用いて免震建物の地震応答解析を行った結果、水平2方向入力を受ける免震部材にはねじれモーメントによる付加応力が発生することにより、従来の水平1方向の検討ではそれが把握できずに危険側に評価になってしまうことが明らかになった。その付加応力の増加程度は概ね10%であり、今後、免震建物の設計では水平2方向による応力増を10%程度に設定する必要がある。 一連の研究成果のうち、新たに開発した免震部材の多次元連成力学モデルについては、米国UC Berkeleyで開発されているオープンソース構造解析プログラムOpenseesに組み込まれ、運用が開始された。これにより、本研究成果が世界中に展開されることとなった。
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