研究課題/領域番号 |
23360238
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 匡樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30262413)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | RC建築構造物 / 耐震性能評価 / 終局限界 / 修復限界 / 地震被害 / 既存建物と新築建物 / 評価法の統合 |
研究概要 |
(1) 耐力低下する部材の耐力低下挙動の解明、および、(2) 耐力低下部材を含む架構の挙動解析:平成23、24年度に鉄筋コンクリート造架構の加力実験を行った。その結果に基づき、部材の軸耐力の低下を模擬できる理論モデルを開発した。また、軸耐力の低下を解析するための解析アルゴリズムを開発した。これらを用いて骨組の静的増分解析を行った結果、実験結果の荷重-変形関係と良好な対応を示し、建物が軸崩壊に至る挙動を静的解析で追跡することが可能となった。 (3)部材の損傷量と残存耐震性能の評価:部材の損傷量モデルの高精度化を行い、軸力比やせん断スパン比をパラメータとして精度良く損傷量を解析することが可能になった。また、損傷量と残存耐震性能の関係を、過去に行った高強度コンクリートを用いた柱実験結果に基づいて検討を行った。その結果、柱に生じる残留ひび割れ幅と「部材の」残存耐震性能は、高強度コンクリートを用いた場合でも良好に対応することが分かった。また、これまでは特定の崩壊形の建物を前提に「架構の」残存耐震性能を評価する手法が開発され、その他の崩壊形の建物にも準用する形で利用されてきたが、さまざまな崩壊形の建物に適用可能な残存耐震性能評価法を開発した。 (4)部材の損傷量と残存性能に基づく架構の修復限界及び安全限界の評価法の提案:これまで、架構の修復限界は部材損傷に基づいた残存耐震性能から評価されており、修復費用などの経済的な要因が考慮されていなかったが、本研究では架構の修復限界を、構造部材の損傷量だけでなく非構造部材に生じる損傷や建物のライフサイクルコストなどを考慮して評価する手法の提案を行った。安全限界は等価線形化法や(1)(2)で提案した手法を用いて建物が崩壊する変形を求めることが可能となったため、個々の建物については建物が崩壊に至らない限界、すなわち安全限界を評価することが可能となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耐力低下する部材および架構の挙動解析については、静的解析プログラムを作成し実験結果の解析ができる状態になった。部材の損傷量について既往の評価モデルを改良し、また、残存耐震性能評価法を開発し、さまざまな崩壊形に適用できる可能性を示した。架構の修復・安全限界の評価法についても、上記の成果をもとに検討を行っており、全体として順調に研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、研究を遂行する上での大きな問題点はなく、これまでの研究計画通り推進していくことで問題はないと考えている。架構の実験については、23-24年度に1層2スパン架構実験を実施し、作成した分力計により、柱・梁部材の軸力およびせん断力をおおむね精度良く測定できることが確認できた。したがって、今年度は、2層の架構試験体を作成して多層骨組みの実験を行いデータを収集する。 このデータを用いて、架構の残存耐震性能評価法、修復限界・安全限界評価法の検証・改良および高精度化を行っていく。
|