研究概要 |
本研究では,過大な地震動に対して生じうる建物基礎底面での滑動による入力逸散効果の評価手法を確立してその効果を耐震設計に利用することを目的にして,必要な実験的研究および解析的研究を行う。平成23年度の基礎要素試験では,底面でのすべり面を模擬した試験体を作製し,滑動状態における基礎底面での摩擦係数と復元力特性を明らかにした。試験体は,直接基礎フーチング底面と捨てコンクリートの打継ぎ面を模擬して,上部基礎と下部基礎を想定して,コンクリート不連続面をもつ試験体ですべり面を形成する試験体により静的加力試験を実施した。打継ぎ面は,コンクリート表面を平滑化仕上げとして,硬化後に打継ぐ通常施工の場合を基本として,摩擦係数低減のために鋼板を挿入した試験体も比較検証した。その結果,コンクリート平滑接合面では0.6-0.8程度の摩擦係数であるが,鋼板を挿入することにより摩擦係数は0.4程度まで安定的に低減することが可能であること,摩擦係数はコンクリートの応力度レベルが小さい場合はやや大きくなる傾向があること,などがわかった。一方,動的加力試験は平成24年度の実施する予定であったが,加力方法が可能であるかどうかを試験するために,本年度中にも振動台による動的加力試験を予備試験として2体の試験体で実施した。コンクリート面の試験体では平均摩擦係数は0.60、最大摩擦係数は0.77であった。鋼板を挟んだ試験体においては平均摩擦係数0.41、最大摩擦係数は0.69となった。実験結果により,振動数が減少すなわち長周期の際に摩擦係数は大きくなる反面、速度が増加すると摩擦係数は減少することを明らかにした。また,静的試験の場合と同様に,鉄板を捨コン部と基礎部間に挟むことでさらに摩擦係数の低減を図ることが可能であること,すなわち,地震動入力は基礎部の滑り挙動によりさらに大きく低減しうる可能性があること,を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画以上に進展しており,24年度も概ね予定のとおりに実施することが可能であるが,接合部詳細に関しては当初予定にない材料の試行的な使用なども含めて,予定よりもやや多くの試験体数を実施し,実用的かつ経済的で,さらに摩擦係数を小さくすることが可能な詳細を目指して開発検証する。
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