研究課題
鋼構造H形断面梁に対して実験的にその実挙動を検討することで,梁の繰返し荷重下における塑性変形能力を横座屈と局部座屈の連成座屈を考慮して統一的に評価すること及び繰返し荷重下における連成座屈挙動を解明することを通し,座屈耐力や座屈に伴う塑性変形能力を向上させるための効果的で有益な座屈補剛手法を検討し,合理的な座屈設計法を確立することを本研究の最終目的としている.24年度に行った具体的な研究サブテーマは以下の通りである.1)H形断面梁の端部境界条件及び荷重条件を考慮した弾塑性座屈挙動,2)断面形状変化及びスチフナ補剛を施したH形断面梁の連成座屈挙動と繰返し変形性能,3)上フランジ連続拘束下における連成座屈耐力評価手法の確立サブテーマ1)では,載荷実験及び数値解析を実施した.その結果,昨年度提案した横座屈耐力算定式を弾塑性域に拡張することの可能性及びその手法についての基礎的資料は提示できた.ただし,載荷実験及び数値解析での不整合もみられた.この要因については,現在も解明中であるが,今後の実験方式及び実現象を適切に踏まえた設計式を検討する際の貴重な資料となり得るものである.サブテーマ2)では,梁せい方向に勾配を有するテーパー梁の局部座屈挙動及び横座屈挙動を明らかにした.併せて,繰返し載荷実験を行い,その基本的座屈性状を考察した.さらには繰返し載荷実験を行い,連成座屈を考慮した,座屈形式判別式,塑性変形能力評価式を提案した.これにより,荷重状態に応じた合理的な梁断面形状算定が可能となる.また,梁端部にスチフナ補剛を施した場合の局部座屈耐力算定を行った.サブテーマ3)では,エネルギー法を用いた弾性座屈耐力算定式を提案した.その際,境界条件,モーメント勾配,断面形状の影響を適切に反映させた.また,横座屈拘束治具の試設計を行うとともに,連続拘束と見なせる補剛間隔の設定を行った.
2: おおむね順調に進展している
サブテーマ1)については,当初の計画を概ね達成している.サブテーマ2)については,当初の計画以上に達成しており,十分な成果が得られている.これについては具体的な設計手法の基礎となり得る詳細な知見を提示出来ており,その成果の多くを論文としてまとめる事ができた.サブテーマ3)については,当初実験を行う予定でいたが,実験計画を行う上で,その設定条件を十分吟味するとともに,載荷治具試設計と設置箇所の決定に時間を取られたため,当初計画よりもやや遅れている.ただし,本年度の計画を踏まえて25年度の当初より実験実施を計画しているため,25年度終了時点では,当初の計画を概ね達成できる見込みである.以上から,総合的に判断し,本研究は,おおむね順調に進展していると判断している.
今後も申請当初の計画通り研究を遂行し,本研究の最終目的を達成予定である.ただし,時間及び予算の関係上,載荷実験については,修正が必要である.必要最小限の試験体数で検討を行うとともに,簡素なモデル化が必要となる.そのため,載荷実験で網羅する事が出来なかった範囲については,数値解析を適宜実施し,鋼構造部材の連成不安定挙動の解明と高度座屈設計手法の確立に向けて研究を進めていく予定である.
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