研究課題/領域番号 |
23360243
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中込 忠男 信州大学, 工学部, 教授 (60111671)
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キーワード | 鋼構造 / 柱梁溶接接合部 / 高張力鋼 |
研究概要 |
本研究は高張力鋼を用いた現場型柱梁溶接接合部の変形能力を向上させるための設計・施工方法の確立を目的としている。平成23年度は80キロ級鋼材、60キロ級鋼材を用いた柱梁溶接接合部に孔空きフランジ方式、ドッグボーン方式、水平ハンチ工法を用いて実大柱梁試験体の破壊実験を行い、高張力鋼を用いた接合部の性能及び破壊性状にどのような影響を及ぼすかについて実験的に明らかにした。 80キロ級鋼を用いた柱梁溶接接合部の実大破壊試験することで以下のような知見を得ることができた。 1)梁端部分においてはフランジとスチールタブのスリット底に歪が集中すると、80キロ級鋼の降伏比の高さや伸び能力の低さおよび梁フランジHAZでの軟化により、早期破断に至った。 2)切り出しタイプの水平ハンチ工法を用いて梁端溶接部を拡幅し、ハンチ先端部位置で塑性変形をさせることで、変形能力が大きくなった。 3)孔空きフランジ工法を用いた場合、応力比を1.07から10%大きくして設計しても十分な塑性変形能力を発揮することができなかった。 4)ドッグボーン工法試験体は、一定振幅後も若干の塑性変形能力を発揮したが、大きな変形能力は期待できない。 60キロ級鋼を用いた柱梁溶接接合部の実大破壊試験することで以下のような知見を得ることができた。 1)60キロ級鋼のように降伏比が高い場合でも、スカラップを有する現場溶接型試験体に孔空きフランジ工法を用いることで変形能力を向上させることができる。 2)孔空きフランジ工法を用いる場合、60キロ級鋼の高い降伏比に対して応力比を高く設定して設計することでより大きな変形能力を期待することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度には、ほぼ計画通りに研究を進めることができ80キロ級鋼材、60キロ級鋼材を用いた試験体の実大破壊試験を実施し、概ね予想通りの変形性能、破壊性状を確認することができた。また現在の達成度としては年度別の計画においては予定を完了していて、研究期間全体では40%程度達成することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、23年度に行った実大実験の結果に加えて素材試験、有限要素法による解析を行う。解析により接合部ディテールごとの歪及び応力挙動を把握するとともに、破壊力学的な検討を加えることで破壊の原因を検討する。 24年度はこのうちの素材試験をおこなう。破壊起点となり得る箇所の機械的性質を把握する事で、実大実験で得られた結果である破壊原因や破壊性状についてより詳しく調査する事が可能となる。本実験において破壊起点となり得るのは、母材(スカラップ部、最小断面部)、溶接部(溶接金属(DEPO)、溶接熱影響部(HAZ部))等が挙げられる。従って、この部位の素材試験をおこなう。
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