研究課題/領域番号 |
23360243
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中込 忠男 信州大学, 工学部, 教授 (60111671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 鋼構造 / 柱梁溶接接合部 / 高張力鋼 |
研究概要 |
本研究は高張力鋼を用いた現場型柱梁溶接接合部の変形能力を向上させるための設計・施工方法の確立を目的としている。平成23年度に実大柱梁試験体の破壊実験、平成24年度に実大実験で得られた破壊原因や破壊性状について詳しく検討するため、素材試験をおこなった。以下に結果を示す。 80キロ級鋼 1)シャルピー衝撃試験:梁母材の破面遷移温度は-109℃、0℃シャルピー吸収エネルギーは258Jと、非常に靱性の良い材料であることがわかった。梁フランジHAZ部は、破面遷移温度が-31℃、0℃シャルピー吸収エネルギーは197Jと、梁母材に比べ靱性の低下が見られるが、HAZ部も靱性が良いことがわかった。柱母材及び溶接金属についても、破面遷移温度は-80℃と低いが、柱フランジHAZ部の、0℃シャルピー吸収エネルギーは85Jと、母材に比べ著しく低くなった。 2)ビッカース硬さ試験:溶接金属部(DEPO)の硬度は母材に比べ大きくなり、HAZ部では軟化が見られる。また、HAZ部とDEPO部の境界で硬さが最大となる傾向がある。 60キロ級鋼 1)シャルピー衝撃試験:梁フランジ母材の梁母材の破面遷移温度は-66.1℃、0℃シャルピー吸収エネルギーは287Jと、非常に靱性の良い材料であり、梁フランジHAZ部は、破面遷移温度-6.6℃、0℃シャルピー吸収エネルギー190Jと、梁母材に比べ靱性の低下が見られるが、HAZ部も靱性が良いことがわかる。溶接金属は、すべての試験体の溶接ビードに用いられるMG-60において、破面遷移温度が-83.1℃で0度吸収エネルギーが148Jと溶接金属としては良好な値を示した。 2)ビッカース硬さ試験:溶接金属部(DEPO)の硬度は母材に比べ大きくなり、HAZ部では軟化が見られる。また、熱影響部とDEPO部の境界で硬さが最大となる傾向がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
具体的に80キロ級鋼材、60キロ級鋼材を用いた試験体の実大破壊試験及び素材試験を行い概ね予想通りの変形性能、破壊性状を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、23年度に行った実大実験の結果に加え、24年度における素材試験結果を用いて有限要素法による解析を行う。解析により接合部ディテールごとの歪及び応力挙動を把握するとともに、き裂が進展し始めるJ積分値であるJiの算出、破壊限界応力であるσc、延性き裂先端の最大種応力であるσmax、延性き裂先端のき裂開口変位であるδc、それぞれの算出による破壊力学的な検討を加えることで破壊の原因を検討する。
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