柱梁溶接接合部は工場溶接接合形式と現場溶接接合形式の2種類に大別されており、工場溶接接合形式に比べて比較的低コストで輸送もし易い点から現場溶接接合形式が用いられることが多い。 工場型柱梁溶接接合形式ではノンスカラップ工法が高い変形能力を示すことが明らかにされているが、現場型柱梁溶接接合形式は現場にて下フランジの完全溶け込み溶接を下向き姿勢で行う為、下フランジにノンスカラップ工法の適用が困難であり溶接線を貫通させる為にウェブ部にスカラップが設けられる為、工場型柱梁溶接接合部に比べてウェブの断面積が変わる事などから変形能力に乏しくスカラップ底を起点とする脆性破壊が危惧される。その為、現場型柱梁溶接接合形式であっても工場型柱梁溶接接合形式に性能が劣らない溶接方法やスカラップ形状の提案が必要となってくる。 そこで本研究では現場型柱梁溶接接合部において早期破断の要因となるスカラップやスカラップを省略化したスニップカット・スカラップを設けた時に大抵の場合削ってしまうフィレット部の有無、スカラップ・スニップカットに補強ビードを施した場合をパラメータとしたSM490A鋼を用いて作られた現場型柱梁溶接接合部に十分な塑性変形能力を確保出来るように実大脆性破壊試験を行い、また解析を行う事で以下の知見を得た。現場溶接型柱梁溶接接合部であってもフィレット部を残す事によりスカラップ底での応力集中を緩和でき早期破断を防ぐ事が出来る。補強ビードを置く事は靱性の劣化や溶接欠陥が生じる可能性が高まる事から実用的ではない。スニップカットを用いた試験体は溶接充填を行い断面欠損部を埋める事により従来の工場溶接型柱梁溶接接合部と同等以上の変形性能が期待でき補強ビードを置く事よりも施工性が優れている。
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