研究課題/領域番号 |
23360247
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
多田 元英 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90216979)
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研究分担者 |
桑原 進 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10243172)
向出 静司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20423204)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 角形鋼管 / 局部座屈 / 倒壊 |
研究概要 |
建築基準法が要求するクライテリアだけに基づいた画一的なチェックだけでは,近い将来に発生するであろう南海・東南海・東海および上町断層帯等の超大地震に対して建物の倒壊が危惧される。本研究では,構成部材の劣化特性を把握した上で倒壊時の崩壊機構や骨組の劣化挙動を明らかにし,鋼構造建物の完全倒壊に対する構造性能を定量的に明らかにして設計に反映させることを目的としている。そのような目的の下,角形鋼管柱の局部座屈を伴う劣化挙動を把握するために,大変形域までの載荷実験を実施した。材料の製造工程(降伏比)をパラメータとした昨年度に実施の単調載荷実験結果を踏まえて,今年度は,鋼種や製造工程が異なる試験体を追加した載荷実験,および繰返し載荷実験,45°方向載荷実験を,幅厚比をパラメータとして実施した。その結果,FAランク境界値程度以上の幅厚比の場合,鋼種や製造工程による最大耐力の差はあまりなく,幅厚比がさらに小さい場合に,低降伏比の材料の方が大きな最大耐力を示すことがわかった。また,柱断面の角部曲げ半径が小さいほど圧縮側フランジ角部の変形量が小さくなるため,冷間成形材より溶接組立材の方が耐力劣化しにくいことがわかった。これらの知見を踏まえて,従来提案されていた角形鋼管柱の復元力モデルに改良を加え,より実挙動に近いモデルを提案した。一方,設計の際に活用可能な力学モデルとして,既に提案されている「魚骨形モデル」の有用性を示すとともに,建物の倒壊まで追跡可能にするべく,構成部材が劣化挙動を示す場合についてのモデル設定手法を提案した。また,建物全体の倒壊挙動をシミュレートするために用いる「統合化構造解析システム」において,部材端に2軸曲げの回転バネを設定した柱を弾塑性立体解析するためのステーションプログラムを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広範なパラメータの下で,柱部材の大変形域での局部座屈にともなう劣化挙動を概ね把握でき,その結果に基づいて力学モデルの改善も提案できている。また,数値解析で建物の倒壊挙動を検討するために,モデル化手法が提案され解析ツールも着々と開発されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した載荷実験結果を詳細に分析し,精緻な数値解析による劣化挙動の追跡,建物全体の倒壊挙動を検討するための簡易な力学モデル・復元力モデルの開発を行う。また,角形鋼管柱の劣化挙動を十分に把握するために,さらに必要な載荷実験を行う。
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