鋼と木質材料の複合部材の構法のタイプを分類し,構法成立のために必要な要求性能に関して各タイプを総合評価し,それらの評価結果をもとに,具体的な構法の例を示した。次に,鋼と木質材料の複合構造の短柱圧縮試験を行い,各種の接合法(接着接合・接触接合)の相違による圧縮性状を確認した。さらに,中低層建物に適用する設計法を提案し,設計クライテリアを満たす設計例を示した。得られた結果は下記のとおりである。 1) 鋼と木質材料の複合部材の構法のタイプを分類し,その要求性能を総合評価することで,複合構造システムの構法成立の可能性を示した。2) 構法に対する要求性能として,安全性,機能性,環境性,意匠性,加工性,施工性,経済性を総合評価した結果,柱においては角形鋼管の周囲を木質材料で覆うタイプ,梁においては圧延H形鋼の周囲を木質材料で覆うタイプが最も優れている。3) 角形鋼管の周囲を木質材料で覆うタイプ,圧延H形鋼の周囲を木質材料で覆うタイプを各々柱,梁に使用した鋼と木質材料の複合構造システムの構法例を示した。4) 短柱圧縮試験によると,等価細長比λeが100より小さい場合、実験値と適合する座屈低減係数η’ は最小値で0.75である。5) 座屈拘束方杖ブレースを有する中低層建物に適用するCSTSの設計法を提案した。6) 横座屈細長比および鋼の降伏先行の条件を満たす曲げ部材の設計式を提示した。7) 提案した条件を満たす座屈拘束方杖ブレースを有する10層5スパンの建物の試設計を行い、半剛接合の柱梁接合部のもとで、主架構は弾性域に抑え、座屈拘束ブレースのみが塑性化することを時刻歴応答解析により確認した。
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