研究課題/領域番号 |
23360254
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 慎一 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80282599)
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研究分担者 |
横山 栄 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80512011)
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キーワード | 音源指向性 / 波動数値解析 / 頭部伝達関数 / 会話のしやすさ |
研究概要 |
室内外の音響伝搬、遮音・吸音、音源及び受音の指向特性の影響を考慮可能な波動数値解析を、3次元音場シミュレーション技術と統合し、精緻な音場再生シミュレーションシステムを構築する。このシステムにより、受け身のスタンスで「聴く」だけでなく、対話などの双方向コミュニケーションの視点から音場を評価することを可能とするシステムを目指している。今年度は、下記の項目について検討を行った。 人頭を想定した発話および受聴指向性のモデリング人間の発話と受聴の指向性を波動数値解析の中で考慮するため、バイノーラル録音のために用いられるダミーヘッドに人の発話を模擬するマウスシミュレータを装着したHATS(Head and Torso Simulator)の詳細な3次元幾何情報を取得し、そのデータを用いて、発話の指向性および受聴のための頭部伝達関数を時間領域有限差分(FDTD)解析の中で模擬できるモデルを構築した。このモデルは、本研究課題の中で基盤として用いるモデルである。作成した人頭モデルの模擬精度を確認するため、解析で得られた方向別インパルス応答を用いた方向定位実験を行い、水平面内においては、個人差の要因を除いた範囲でほぼ十分な方向定位が得られることを確認した。また、作成したモデルを用いた応用として、車室内空間および小打ち合わせスペースを想定した会話の聞き取り易さに関する聴感実験を試み、空間音響問題への適用性に関する検討を開始した。 球面調和関数を応用した音源指向性モデルの開発音源の幾何形状をモデル化して指向性を表現する方法では十分に細かい離散化が必要となり、計算機負荷が非常に大きくなる。そこで、球面調和関数指向性を利用して比較的大きな離散化によって任意の指向性を合成する手法について検討した。今年度は基本的な原理の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指向性を考慮した波動音響解析システムの構築を目指した3ヶ年の研究のうち、初年度となる今年度は、システムの理論的核となる人頭による発話および受聴指向性を模擬する詳細なモデルを作成することができ、その基本的な性能を確認できた。2年度以降に行う予定の建築音響問題に対する応用を行う上での技術的基盤を確立できたと考えており、研究は概ね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した指向性を模擬できるモデルを各種音場に応用し、建築音響問題に対する応用例を蓄積する。居室や会議室など比較的小規模な空間に対しては、人体による遮蔽や回折効果も場の特性に影響すると考えられるので、HATSの3次元幾何情報に基づくモデルを適用し、ホールなど比較的大きな空間に対しては指向性の模擬ができれば十分と考えられるので、球面調和関数の合成を応用した数理的な指向性モデルを応用することを考えている。
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