研究概要 |
会話に含まれる個人情報の保護,すなわちスピーチプライバシの保護の需要が高い空間として,病院の診察室や薬局・銀行の窓口等が挙げられるが,オープンプランで設計されるのが一般的であり,現状では遮音性能の確保は困難である。本研究では,オープンプランの利便性を保ちつつ遮音性能を向上させる技術と,会話を聞こえにくくする音を発生させるサウンドマスキングシステムの効率を向上させる技術の両者について検討する。23年度は,2つの心理実験を行った。 実験1では,遮音性能の向上に繋がる吸音処理に着目し,吸音処理によって変化する残響時間が単語了解度に及ぼす影響を検討した.その結果,以下を明らかにした.(1)残響音のみの音場の単語了解度は,直接音のみの音場と比べ有意に低い。(2)残響時間が長くなると単語了解度は低下するが,その傾向はSN比によって異なる。(3)単語了解度と音声伝送性能の物理的評価指標であるSTIは対応がみられた。しかし,同じSTIでも残響音のみの音場の単語了解度は通常の直接音が卓越する音場よりも低い。 実験2では,サウンドマスキングシステムで発生させるノイズの効率を評価する上で重要なマスキングノイズの不快感について検討した。定常ノイズ(N型),音声を時間領域で変換したノイズ(T型),音声を周波数領域で変換したノイズ(F型)の3種類について不快感を心理実験により求めた。また,「長時間,作業している」と「短時間,何もしていない」状況の2つを被験者に想定させた上で,不快に感じないノイズの音圧レベル(許容レベル)を判断させた。その結果,以下を明らかにした。(1)マスキングノイズの種類によらず,「長時間,作業している」状況の方が,「短時間,何もしていない」状況よりも許容レベルは低い。(2)許容感覚レベルは想定した状況によらず,F型,T型,N型の順で低い。
|