本研究では、都市を「領域型ミュージアム」として活用するためのシステムデザインの検討と構築を行った。平成23年度は、領域型ミュージアムの「構成要素」として人間、空間、資源を抽出し、3要素を組み込んだシステム基盤の基本計画を行った。平成24年度は、これら構成要素間の「連携手法」を中心に研究を行い、情報共有を可能にするアプリの設計および開発を行った。平成25年度には、携帯端末(iOS7対応)および管理サーバに対して、これらのアプリおよびシステムを実装してシステムの実用化を行った。一連の開発研究の結果、都市空間内でユーザが選定した場所をpositionとして登録し、positionを集積したspace(場所群)を管理サーバのspace archiveにアップロードすれば、それを他のユーザがダウンロードして空間情報を共有することが可能になった。この状況を受けて領域型ミュージアムの試行実験を行い、人間連携、空間連携、資源共有という3つの視点から検討を行った。 人間連携においては、領域型ミュージアムの情報提供者をユーザネームによって識別し、その嗜好性に応じて他者の情報を取り込めるようになった。その結果、多くのユーザが連携しながら領域型ミュージアムを利用できるようになった。空間連携においては、領域内に分散する施設群や場所群を相互に関連づけて、領域型ミュージアムを自由に構築できるようになった。その結果、都市空間を多様な領域型ミュージアムの集合として包括的にとらえることができるようになった。資源共有においては、position(場所)の属性である資源情報をユーザの提供情報として組み込めるようになった。ユーザが収集登録した資源情報が他のユーザと共有されることにより、都市空間の場所やモノに関する包括的なアーカイブを形成できるようになった。
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