本研究では、経路選択の行動が人の置かれた状況、すなわち緊急時(extraordinary)と平常時(normal)で、また平常時でも目的が決まっている場合(resolute)と決まっていない場合(recreational)によって異なると考え、その原因となる経路選択時に要求される情報の差異を明らかにするため、選択行動と種々の状況変数(人の置かれた状況および環境情報の配置)を実験的に明らかにすることを目的としている。 本年度までの研究でさまざまな経路空間および状況を取りあげ、視聴覚シミュレーション空間および現実の空間における実験により、以下のような事項を明らかにした。1)夜間の街路における聴覚情報がその場所の安全性評価(不安感)に及ぼす影響について、2)妊婦および幼児を連れた母親による、街路空間の安全性・快適性に関する評価に及ぼす環境要素について、3)冬期に点字ブロックが無効となる積雪地域で、視覚障がい者の聴覚情報による歩行誘導の可能性について、4)津波避難時の実際の行動と平常時に想定している行動との差異、および居住地の認知地図の歪が経路選択に及ぼす影響について、5)商業地における街路の物理的特徴が来街者の回遊行動および商品等に対する注視傾向に及ぼす影響について、6)駅空間等における歩行動線に対する誘導サインの配置と見つけやすさの定量的関係について、7)経路移動中と静止時の情報取得の差異、およびそれが景観評価に影響することを明らかにした。
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