本年度は下記の集落・地区を対象に居住と地域の持続性に関する調査・研究を実施した。 1)中越地震被災集落・竹之高地集落:被災により最も世帯数が減少した集落を対象に、転出者が母村との人間関係・コミュニティや住宅・神社・農地等の環境との関係を維持し、山村の持続性を確保している点に着目し、その集落の過疎化、震災後の居住動向、旧竹之高地町内会の再編とその活動の実態、集落の前住民・元住民の居住形態、生活、集落との関係を明らかにした(日本建築学会住宅系研究報告会論文集に発表)。 2)阪神淡路大震災被災地、淡路旧津名町志筑地区:復興事業によって復興した地区を対象として平成24年度に行った研究を再整理し、従前コミュニティの特質・変容とその継承の要因を明らかにした(日本建築学会計画系論文集に発表)。 3)鳥取県倉吉・徳島県脇町:伝統的町並みが保全されている地区を対象に、居住と地域の持続性の観点から、従来の町並み保存において扱われる事の少なかった地区の裏側に着目し、地区の空間構成、土地利用と地区の課題を対応させて、保存・居住・観光の視点から地区の実態を明らかにし、整備方針を示した。 これまでの調査・研究で明らかにした集落・地域における居住と地域の持続性について、(1)地域外親族との関係も含めた二地域居住や居住継続による家族・地域コミュニティの持続性、(2)転出者が母村との人間関係・コミュニティや住宅・神社・農地等の環境との関係の維持による山村の持続性、(3)コミュニティの段階的構成と震災復興における被災前の従前コミュニティの継承、(4)災害や漁港整備、インフラ整備、社会背景の変化による海との関係からみた居住地変容のメカニズム、(5)新旧住民による地域環境を活かした地域づくりと地域の持続性とコミュニティ形成、としてまとめ、それらが家族・地域コミュニティや農村環境の持続性の鍵であることを検証した。
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