研究課題/領域番号 |
23360270
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中島 直人 慶應義塾大学, 環境情報学部, 専任講師 (30345079)
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研究分担者 |
初田 香成 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70545780)
中野 茂夫 島根大学, 総合理工学部, 准教授 (00396607)
西成 典久 香川大学, 経済学部, 准教授 (90550111)
佐野 浩祥 立教大学, 観光学部, 助教 (50449310)
津々見 崇 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40323828)
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キーワード | 都市計画史 / 遺産 / 東日本大震災 / デジタルアーカイヴ |
研究概要 |
本研究は、我が国でこれまでに都市計画によって生み出されてきた都市空間を今後の都市づくりに活かすべき歴史的資産として捉える「都市計画遺産」という概念を新たに構築し、その実態を把握するとともに、保全活用の方策の見通しを明らかにすることを目的としている。研究初年度にあたる平成23年度については、1「都市計画遺産」の概念の創出、2海外におけるPlanning Heritageをめぐる取り組みの分析、3全国「都市計画遺産」リストの作成、4「都市計画遺産」事例の詳細調査を計画していた。以下、この4つの取り組みについての成果について述べる。 -1「都市計画遺産」の概念の創出に関しては、全国の識者を対象としたアンケートを実施し、その結果をKJ法A型図解化し、概念の見取り図を作成し、都市計画遺産の特質を構造化した。 -2「海外におけるPlanning Heritageをめぐる取り組みの分析」については、アメリカ都市計画協会、フィラデルフィア歴史保存アライアンス、オーストラリアの都市計画遺産研究の第一人者のロバート・フリーストーン氏、イギリス都市計画協会等でのインタビュー調査、及び具体的な都市計画遺産の見学を実施し、こうした国々で都市計画遺産を巡る活動が活発化していることが把握できた。 -3全国「都市計画遺産」リストの作成については、議論を重ねた結果、まず代表的な都市計画遺産10例を選定することとし、それらの遺産について詳細なエビデンスの作成を行った。 -4「都市計画遺産」事例の詳細調査については、上記の海外調査と10例の調査と連動させ実施した。さらに、東日本大震災の発生という状況を踏まえて、被災地における都市計画遺産の調査を緊急に実施するとともに、都市計画遺産の根拠であり、今後の復興に生かすべき、過去の都市計画・復興計画に関する図面等の情報を収集し、デジタルアーカイヴとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「都市計画遺産」の概念の整理や海外での取り組みの把握は、当初の予定とおり実施し、成果を得た。「都市計画遺産」リストや事例の詳細調査に関しては、検討の結果、10例に絞って実施することになったが、一方で、予定を変更し、東日本大震災の被災地において、都市計画遺産をリスト化し、詳細に調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度については、「概念構築」に関して、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の取り組みについて比較分析を行い、その補足として各国の具体事例についてのヒアリングやアンケートイ等も実施する予定である。また、「実態把握」については、代表的都市計画遺産10例をもとに選定基準やプロセスを具体的に検討し、更にウェブサイト等を通じた事例収集を進める。また、中間発表として2012年にサンパウロで開催される国際計画史学会(IPHS2012)で研究成果の発表を行う予定であったが、震災対応等でその準備が整わず、また、当初より予算額も減額されているため、アメリカ・イギリスでの補足調査において、現地の識者との意見交換を進め、最終的なとりまとめ段階(平成25年度)において論文投稿を行う方針とする。なお、本科研と連動させるかたちで、都市計画遺産研究会、および、日本建築学会前現代都市・建築遺産計画学的検討特別研究委員会を組織して研究を進めているが、今年度以降もその体制を維持する予定である。
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