研究課題/領域番号 |
23360276
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早稲田 嘉夫 東北大学, 多元物質科学研究所, 教育研究支援者 (00006058)
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研究分担者 |
鈴木 茂 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40143028)
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
藤枝 俊 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60551893)
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キーワード | 金属物性 / 解析・評価 / 放射線・X線・粒子線 |
研究概要 |
スピネル構造の酸化鉄の粒子を作製するために、まず2価の鉄とリン酸を含む水溶液に酸素ガスを吹き込むことによりstrengite(FePO_4・2H_2O)からなる粗大粒子を作製した。次に、それらをアルカリ溶液に浸漬して粒子中のリンを溶出させることにより、外形を保持した状態のナノスケールの微細粒子で構成された多孔質鉄酸化物粒子が得た。この粒子中の鉄は、スピネル構造のγ-Fe_2O_3と類似した局所構造を持ち、大粒径であるため比較的取り扱いが容易で、さらに大比表面積を有していた。つまり、この多孔質鉄酸化物粒子の表面に水溶液中のイオンを吸着させ、熱処理による吸着イオンを浸透させることにより、機能性フェライトが得られる可能性がある。そこで、水溶液中でのこの多孔質鉄酸化物粒子へのCoイオン吸着特性を調べた。その結果、pHが約8以上となると水酸化Coが水溶液中で析出するため、精密なpHの制御が必須であるが、Coイオン吸着量はpHが高いほど増加することが明らかになった。また、多孔質鉄酸化物粒子の結晶構造の熱安定性の調査を行ったところ、250℃程度以下であればスピネル構造が保持されることが明らかになった。このため、pHを制御してCoイオンを吸着させた多孔質鉄酸化物粒子に250℃で熱処理を施した。さらに、吸着したCoイオンの熱処理による変化を明らかにするために、振動型磁力計(VSM)およびSQUID(超伝導量子干渉素子)を用いて磁気的性質を調べた。その結果、この多孔質鉄酸化物粒子は超常磁性を示すが、Coイオンを吸着させた後、熱処理を施すことによりそのブロッキング温度が大きく上昇し、さらに、低温における保持力が大きく増大することが明らかになった。つまり、吸着したCoイオンが熱処理によりスピネル構造に入ることを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リン酸鉄粒子(FePO_4・2H_2O)の共沈法による合成において、反応条件を制御することによりstrengiteだけでなくphosphosideriteの粗大粒子が得られることが明らかになった。アルカリ処理を用いた脱リンによる多孔質鉄酸化物粒子の作製において、研究開始当初よりも大きな展開が期待できる成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次年度は多孔質鉄酸化物粒子の表面に吸着したCoイオンの熱処理による浸透におけるCoの環境構造の評価および元素不均一性の評価などに研究を展開していく。また、カチオン分布測定のための準備や予備実験にも取り組む。さらに、今年度確立した手法を活用してNi、MnまたはZnなどのイオンを用いた機能性スピネルの合成も試みる。吸着したCoイオンの熱処理による侵入は、熱処理条件に強く依存することが予測される。 そこで、当初は計画していなかったが、Coが吸着した多孔質鉄酸化物粒子に異なる条件で熱処理を施し、その磁気特性の詳細な調査にも取り組む。
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