研究課題/領域番号 |
23360276
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早稲田 嘉夫 東北大学, 多元物質科学研究所, 名誉教授 (00006058)
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研究分担者 |
鈴木 茂 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40143028)
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
藤枝 俊 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60551893)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化鉄 / 超常磁性 / X線吸収分光 |
研究概要 |
昨年度までの研究において、粒径が数十μmのリン酸鉄粒子をアルカリ溶液に投入することにより、酸化鉄の微細粒子で構成された多孔質粒子が得られることを示した。酸化鉄の微細粒子は、カチオン欠陥を有したスピネル構造のマグヘマイトと類似した局所構造を持つ。また、多孔質粒子をpHを制御してCoイオンを含んだ水溶液中に浸漬することにより、Coイオンを表面に吸着させることに成功した。 本年度は、Co吸着後の多孔質粒子の磁気的性質におよぼす熱処理の影響を調べた。その結果、多孔質粒子は超常磁性を示し、熱処理時間の増加および熱処理温度の上昇に伴いブロッキング温度は上昇することを明らかにした。Coを吸着していない多孔質粒子のブロッキング温度も熱処理を施すことにより上昇するが、同じ熱処理条件で比較すると前者の方が後者よりも高いブロッキング温度を示した。また、350℃で熱処理を施したCo吸着後の多孔質粒子は5 Kの磁化曲線において大きな保磁力を示した。つまり、Co吸着後の多孔質粒子に熱処理を施すことにより、多孔質を構成する鉄酸化物微細粒子の磁気異方性定数が増大することを示唆する結果を得た。 Co吸着後の多孔質粒子の形態におよぼす熱処理の影響を調べるために、窒素ガスの吸着特性を測定した。その結果、熱処理時間の増加および熱処理温度の上昇に伴い多孔質を形成する酸化鉄微細粒子の焼結により比表面積は減少するが、350℃で熱処理を施したCo吸着後の多孔質粒子の吸着等温線には、メソ孔を有した多孔質体の特徴が観察され、熱処理後も多孔質の状態が保持されていることを明らかにした。 Co K吸収端のX線吸収分光測定を行った。熱処理を施したCo吸着後の多孔質粒子はCoFe2O4と類似したXANESおよびEXAFSスペクトルを示した。吸着したCoが熱処理によりカチオン欠陥サイトを占有したことを強く示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上の成果が得られた。例えば、マグヘマイトと類似した局所構造を有した酸化鉄の多孔質粒子に熱処理を施すとヘマタイトへの変態が生じるが、CoやZnイオンの吸着によりヘマタイトへの変態温度が上昇する傾向を示すことを見出した。また、Coイオンを吸着させるだけで、多孔質粒子の超常磁性のブロッキング温度の上昇が観測された。これらの成果により、研究当初よりも大きな展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
熱処理を施したCo吸着後の多孔質粒子は大きな保磁力を示した。このような磁気特性の変化は、多孔粒子を構成する酸化鉄微細粒子におけるカチオン欠陥へのCoの侵入に関連していると推察され、Co濃度に強く依存することが予測される。そこで今後は、Co吸着後の多孔質粒子において、熱処理条件やCo吸着量と保磁力の関係を系統的に調べる。 これまでの研究では、CoおよびZnなどのFeとスピネル構造を形成する元素を吸着させて熱処理を施してきた。今後は、Feとスピネル構造を形成しない元素も吸着させる。具体的には、多孔質粒子の磁気特性および形態の熱処理による変化に及ぼすケイ酸イオン吸着の影響を調べる。 スピネル構造のマグヘマイトと類似した局所構造の酸化鉄の多孔質粒子に熱処理を施すことにより、コランダム構造のヘマタイトへの相変態が生じる。これまでの研究で、CoおよびZnなどを多孔質粒子に吸着させることによりヘマタイトへの相変態温度が上昇する傾向を示すことを見出した。そこで、ヘマタイトへの相変態に及ぼす吸着イオンの影響についても検討する。
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