研究課題
擬ギャップ系ホイスラー化合物Fe2VAlについて,非化学量論組成と元素置換の相乗効果により熱電性能の大幅な向上を図るとともに,光電子分光によりフェルミ準位近傍の電子構造変化を直接調べて熱電特性向上の起源を明らかにすることを目的とする。得られた知見は以下のとおりである。1. Fe/V非化学量論組成の合金に対してTaおよびSiを同時置換した結果,電気抵抗率はTa置換量によらずほとんど変化がなく,またゼーベック係数は負の値を示してわずかに減少した。一方,熱伝導率はTa置換によって大幅に減少して室温で6.8 W/mKとなった結果,無次元性能指数はZT=0.29という大きな値を示した。2. V/Al非化学量論組成の合金について高分解能光電子分光測定を行った結果,Vリッチ組成になるほど擬ギャップを構成するFe 3d-V 3d状態間の混成が強くなり,その結果,擬ギャップのエネルギー幅が大きくなることを明らかにし,この擬ギャップ幅の増大が熱電特性向上の起源であると推測した。3. V/Al非化学量論組成の合金について3次元角度分解光電子分光測定により電子構造を調べた結果,Vリッチの合金ではバンドが高束縛エネルギーに大きくシフトするとともに分散が小さくなっており,擬ギャップ幅が増大していることが示唆された。4. V/Al非化学量論組成の合金に対してTaを固溶限付近まで置換した結果,p型n型ともにTa置換による大幅なゼーベック係数の低下はみられず,ピーク温度は高温側へシフトした。また,p型の熱伝導率は約7W/mKまで減少し、無次元性能指数は380KでZT=0.21に達した。一方,n型は360KにおいてZT=0.28となり,300K~600Kの広い温度域で高い熱電特性を示した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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