研究課題/領域番号 |
23360283
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
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研究分担者 |
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70314424)
西松 毅 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70323095)
山田 智明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80509349)
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キーワード | リラクサー / 極性ナノ領域 / 化学的秩序領域 / 電子顕微鏡 / 局所弾性場 / 歪み場 / ドメイン / 構造遷移層 |
研究概要 |
MOD原料を用いた化学的溶液法にてPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(PMN)薄膜をSrTiO_3(001)単結晶基板上に成膜し、001配向したエピタキシャル薄膜を作製した。特に、成膜条件を、Pb過剰組成、ポストアニール温度・雰囲気・アニール時の対向の有無などの観点から最適化することによって、PMN002ピークのX線ロッキングカーブにおいて、最高約0.5°の半値幅を達成した。これはSrTiO_3基板に匹敵する高い結晶性薄膜が得られたことを示している。得られた薄膜を、100-200Vでの低加速イオンミリング法によってダメージを抑制しながら薄片化することにより、原子分解能観察に耐えうる薄片試料を作製できた。高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)法により、基板[110]方向からPMNの原子分解能観察を行った。負の球面収差係数に調整し、金属イオンだけでなく酸素イオンを含めた結晶構造像の撮影に成功した。[110]方位からの投影によりPbカラムとTi-Oカラムに分離できるため元素の識別も可能であった。得られた構造像より、位置によって単位格子が大きく変調を受け、結晶面が不規則に波打っている様子が明らかになり、単純なペロブスカイト構造のPbTiO_3と異なって原子変位が起きていることを直視することに成功した。この結果に対し、幾何学的位相解析を行った結果、局所歪み場の立場から極性ナノ領域の視覚化に成功した。一方、制限視野電子回折図形より、ポストアニール温度の上昇に伴って、h/2 k/2 l/2 型の超格子反射強度の著しい増加が観察された。HRTEM像のBraggフィルタリングにより1/2 1/2 1/2超格子反射のみを結像したところ、この超格子反射強度の増加は個々の化学的秩序領域の成長に対応することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペロブスカイト相Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3単相の高結晶性エピタキシャル薄膜の成膜条件を確立し、幾何学的位相解析による極性ナノ領域の視覚化、及びポストアニール温度が化学的秩序構造の成長に関与することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ペロブスカイト型構造のPb及びMg,Nb原子の置換やポストアニールによる化学的秩序構造の変調がリラクサー特性に及ぼす効果を、ナノ構造とマクロ誘電物性の両面から明らかにしていく予定である。
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