平成25年度は主に、昨年度に引き続きBiFeO3系マルチフェロイック酸化物薄膜における機能元素(特にMn)のドープがその電気的特性に及ぼす影響について、磁気的特性を中心に欠陥構造との関係を調べた。これまでにドープした機能元素としてのMnイオンの状態解析はなされていが、薄膜内の電荷バランス達成のための価数変化によるバッファとしてのはたらきと最適ドープ量との関係は不明であった。そこで、これまでに得られたBiFeO3系薄膜中の構成イオンの価数および結合状態解析データをもとに磁気特性の精密な解析を行い、ドープ元素の価数が磁気特性に影響を及ぼし、かつ磁気特性と薄膜の強誘電特性(+絶縁特性)改善との間には密接な関係があることを見いだした。これにより、磁気特性から欠陥構造の予測が可能となった。また、強誘電特性と磁気特性間にはたらく相互作用については、走査型プローブ型顕微鏡を応用し、作製した薄膜中の任意の領域に電界印可による強誘電ドメイン反転現象を生じさせ、その領域の磁気的な構造変化を磁気力顕微鏡像として撮像することに成功した。さらに、BiFeO3系薄膜の結晶格子歪み状態と薄膜の硬度・ヤング率との相関関係についてもナノインデンテーション法により応力誘起相転移の挙動を含めてより明確にすることができた。一方、特に顕著な特性の向上が見られた強誘電-強誘電相転移を生じる相境界組成を有するBiFeO3系薄膜については、透過型電子顕微鏡観察により異なる結晶格子歪みに起因するナノ構造の存在を明らかにした。また、作製した薄膜のデバイス応用(センサ素子など)に対する可能性探索については、通常の半導体プロセスが微細加工プロセスとして適応可能なこと、分極反転現象と可視光との相互作用から生じる光電流・光起電力と各機能ドープ元素との関係を見いだすことができた。
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