研究課題/領域番号 |
23360293
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
井上 翼 静岡大学, 工学部, 准教授 (90324334)
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研究分担者 |
島村 佳伸 静岡大学, 工学部, 准教授 (80272673)
矢代 茂樹 静岡大学, 工学部, 准教授 (00452681)
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キーワード | カーボンナノチューブ / CNT複合材 / CNT紡績糸 |
研究概要 |
ミリメータ級MWNTを紡績し、引張強度3GPaを超す世界最高のCNT繊維開発を目的とし研究を実施した。CNT紡績糸は主にCNT同士の滑りにより破断する。そこで、CNT-CNT間相互作用を高めるため、CNT紡績糸に引張応力を印加した状態で追撚処理を施した。これにより、CNT間距離が小さくなり、紡績糸強度は2倍以上に向上した。さらに、2本の紡績糸を合糸したところ、さらに引張強度は向上し、1GPaに達した。同時に剛性も向上し、ヤング率は60GPa程度にまで飛躍的に改善した。以上のことは、CNT紡績糸内部に応力がかかりCNT同士の接触表面積が大きくなったことにより、ファンデルワールス結合が促進したことによる。一方、紡績糸を構成するCNT繊維の高アスペクト化による紡績糸強度を向上させるため、CNT径の細線化に取り組んだ。触媒の利用方法を改良したところ、細線化しつつあることがわかった。細線化したCNTで紡績糸を作製し、細いCNTで紡糸するほど引張機械特性が向上する傾向が見られた。 CNT紡績糸及びCNTシートと樹脂に複合化技術を確立するため、高度CNT配列複合材の形成システムの検討を行った。CNTシートをプリフォームとしてハンドレイアップ法によりエポキシ樹脂を含浸させる方法と、CNT紡績糸をプリフォームとし引抜成形法により複合化する方法を検討した。母材であるエポキシ樹脂に比べて、ヤング率は最高で25倍、引張強度は最高で10倍と高い補強効果が得られることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNT間相互作用を高める研究は着実に進展しており、世界的に優れたデータが得られた。CNTの高アスペクト化技術開発も順調に推移し、紡績を保ったまま長尺化をなし得た。CNT紡績糸複合材料の形成技術も理解が深まるとともに、破断メカニごムの解析も進んだ。CNT/樹脂間の相互作用を高める方法について、集中的な検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
CNT紡績糸中でのCNT間相互作用を高めるため、結合剤を用いたCNT間結合技術について研究を進める。CNTのアスペクト比をさらに高めるため、成長初期のCNT合成条件を精査する。また、基板表面にアルミナ薄膜などのナノポーラス構造を形成した後触媒ナノ粒子を形成する方法により、熱拡散を抑制しナノ粒子の熱拡散融合を抑制して細いCNT成長を得る。一方、CNT複合材料については、引き続き紡績糸複合材を作製し、CNT紡績糸への樹脂含浸性、樹脂接着性の評価を実施する。
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